Column - 

Fuji Rock Festival 04


 ついに来てしまった3日目。とは言いながら、時々来る北海道からのメール。娘の写真が送られてくるたびに「帰りたいなー」と思うのも事実。残り一日しっかり楽しむぞ。

 とはいえ、日に日に起きるのが遅くなる。12:50のSouthからスタート。新作中心の選曲であった。叙情的なメロディーがホワイトに鳴り響く。これはこれで気持ちがよかったのだが、Southの音楽性から考えると、トラックに迫力がもう少しあるとよかったかなと言う気もする。また、真っ昼間よりも真夜中の方が似合っているのではないだろうか。

 MUMまで少し時間があるので、「ところ天国」で休む。すると、大道芸をやっていた。これがかなり面白く、すっかり見入ってしまった。音楽以外のことでも、このフジロックは楽しい。パレスオブワンダーでみたサーカスもよかった。

 そのMUMはさすがアイスランドのバンドだけあって、なんとも涼しげな音を奏でていた。客もかなり入っていたところをみると、結構認知度が高いようだ。僕はほとんど知らなかったけど。でも、すごくよかった。シガーロスよりも好きかもしれない。というか、似ているようでまた音楽性の違うバンドだろう。僕はシガーロスの音には精神世界を描いているような印象を受けるのだが、MUMはもっと自然(Nature)世界寄りの音であるような感じがする。

 Cosmic Rough Ridersは少ししか観なかった。昔なら間違いなく好きな感じのバンドなのだが、32歳の今の僕にはさほどジャストな音ではない。

 さぁ、ここからはレッド3連発。まず最初はStills。「Logic Will Brake Your Heart」は最高のアルバムだった。久しぶりにメロディーの良さと小細工無しのサウンドで勝負するバンドが現れたなと思った。さて、彼らのライヴであるが最初は何かイマイチだった。声は出ていないし、演奏もアルバムのようなソリッドさが感じられなかった。3曲目「Lola Stars and Stripes」から、調子があがってきて胸をなで下ろした。その後はグッと演奏もよくなり、会場の熱気もあがってきた。まだ、そんなにキャリアがない部分から見てもちょっと物足りなさは残ったが、彼らの音楽の良さだけはちゃんと伝わってきた。気になったのが、後ろの映像。アルバムのアートワークのような映像がずっと流れていたが、はっきり言って邪魔であった。よく見えないし、コンセプトが伝わってこない。前日Chemical Brothersが映像を効果的に使って、ライヴを盛り上げていたのを見た後だっただけに、お粗末を言わざるを得なかった。

 第2弾はKeane。新人でありながら、これもかなりの人がいた。ピアノ、ドラム、そしてヴォーカルだけなのに、ちゃんとバンドの音として成立し、あの素晴らしい曲達をしっかりと再現している。これだけいい曲がポンポン出てくるのは驚異だ。キャッチーかつメランコリックな曲を書けると言うだけで、彼らはすでに大きな武器を手にしている。この日もその大きな武器を最大限利用していた。ただ、このバンドの弱点とも思える点は、ピアノとドラムというシンプルな構成ゆえ、アレンジへの耐性が弱いことではないだろうか。CDの通りの演奏であればOKなのだろうが、ライヴ用にアレンジするのが難しそうだ。この日の演奏はまさにCD通りという感じがした。これは何も悪いことではないが、ライヴで僕たちオーディエンスが感じたいものを、彼らは今後感じさせてくれるのか。そこが、このバンドの課題となってくるように思う。最後の方「Somewhere Only We Know」の時に観客の興奮は頂点に達したが、これは演奏と言うよりは曲そのものの素晴らしさに感動していたような感じがする。

 Keane終了後、グリーンへWhite Stripesを見に行くが、まさに圧巻だった。本当にステージには2人きりでしかも向かい合うようになっている。なんなんだこの姉弟は。でも、ジャックのギターと歌のテンションが半端ではない。すごいよ。かっこよすぎるよあんた。メグは噂通りに、ちょっと怪しいところもあるが、それを差し引いても素晴らしかった。初日のLou Reedと共にUS勢のすさまじさを見せつけられた。

 最後はAsh。Keane終了後も人が減らず、まだ1時間以上あるというのに人がびっちり。入場制限ギリギリ。なんとティムは炎が出ているフライングVを持って登場。いやー、ロック☆スターだね。「Melt Down」からスタート。ニューアルバムと代表曲を交互に演奏していく。ティムが先頭を切って突っ走り、メンバーも一生懸命それに付いていく。時折ティムが浮いてしまいそうになるのを感じたが、このとどまることを知らない疾走もまたAshの魅力であろう。それにしても、代表曲が濃い。「Girl From Mars」「Shining Light」「Walking Barefoot」もうバシバシ決めてくる。隣のお姉さんは感激で半ベソ書いていた。お姉さんに半ベソ書かせてしまうくらいの曲が書けてしまうティムはやはりすごい。もっと大きなステージで、たくさんの人と共有したかった。

 そんな中、グリーンの大トリが気になる人たちは、Ashが終わる前にもう移動を始める。僕は終了後に移動したが、移動中に聞こえてきたのは「The Boy With The Thorn In HIs Side」。なんだ、ステージの合間のBGMか、そう思っていたらグリーンの中央には赤いシャツを着て、腰をクネックネッさせているモリ様が・・・。なんてこった。頭を冷静にしてよく考えてみる。これは何だ、キャンセルというのは、ドッキリか!?ずいぶん悪い冗談だ、許せんスマッシュなどといろんな考えが頭を巡ったが、周りの客はげらげら笑っている。ん、何だ。よく見てみるとなんか違うぞ・・・そう、これはスミスのコピーバンドThese Charming Menでした。この時間にコピーバンドを持ってくる、しかも直前まで発表無し、これはこれで確かに悪い冗談だ。ただ、演奏自体はなかなかよかったし、MCまでモリ様そっくりのVoの研究熱心さには舌を巻く。選曲も「International Playboy」とかやっちゃうあたりは偉い。そして何よりもスミスナンバーが多かったことは、今回の自分たちの役割をよく分かっていたと思う。彼らには何の罪もない。ただね、もうちょっと考えようよ日高さん。

 気を取り直して、Belle&Sebastianを見に行く。昨日の「ほのぼの」とは違って、多少エレクトリックな感じである。昔に比べてメロウな曲の割合が多くなってきているせいか、観客は目を閉じて聞いたりしている。こういう楽しみ方が出来るのもまたいい。個人的には前日のステージと併せて一セットのような不思議なつながりのあるステージだった。つまり両方見てこそベルセバの本質に迫れるのではないかという。やっぱり不思議なバンドだ。

 最後は渋さ知らズ。初めて見たが、これまたすごかった。はっきり言うと説明不可能な音である。是非見てくれ。ライジングサンでは2回出るぞ

 今夜は、テントをもうまとめて宅急便に出したので、寝ないで一夜を過ごす。パレスオブワンダーに行くが、ストリップのようなものをやっていたり、あちこちで男女がエロい感じになってきているので、速やかにオアシスに移動。しかし、ここでもエローい感じの、MTV「ロックス」でおなじみBOOさんを発見。女の子にべたべたしている。BGMは「Take Me Out」(僕の頭の中で)。そして、彼とその女の子は手をつないでどこかへ消えていきました。

 朝4時、シャトルバスの駅へ向かう。もうすでに長い列が出来ていた。明るくなる空を見つめながら「13日からはライジングサンか」そんなことを考えて。

 やっぱり独特の雰囲気のあるフェスである。サマソニ、ロックインジャパン、ライジングサン、どれも独特であるが、フジはそれらとは明らかにかけ離れて違う。ロックフェスという概念そのものから違う。これは体験しないと分からない。個人的には、ちょっと説教くさいところ(環境問題やもろもろ。徹底していればいいんだけど、ゴミだって結局中途半端な分別)が嫌ではあるけど、あれだけ明確なコンセプトを持ったステージを配し、観客が思い思いに楽しんでいるフェスは、他にないんじゃないだろうか。是非来年も参加したいなぁ。ダメかな?

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