Animal Collectiveのニューアルバム。一昨年新作を出したばかりなので、かなり短いスパンでのリリースとなる。こういう場合、勢いが続くうちにどんどんつくってしまおうという意図が感じられることがあるが、今作はそういうことでもないようだ。
ポップであるがどこか得体の知れないアニコレワールドは健在。でも、これまでと比べてずいぶん聴きやすくなったような印象を受ける。メロディーが重視されてきたというか、これまではあまり形にこだわらずにきていたものが、今作ではある程度まとめられているように感じる。曲の尺も割とコンパクトだ。この辺は物足りなさを感じる人もいると思うが、個人的にはこの方が彼らの良質のメロディーをより楽しめると思う。
ただ、根幹の世界観は変わらずに、The Beach Boysの「Smiley Smile」またはThe
Beatlesの「Revolver」のごく一部を切り取って、純粋培養したようなサイケでカオティックな世界がただただ広がっている。サウンドの構造は、すごく入り組んでいるというわけではない。この手の音楽としてはトラックは割とシンプルだと思う。
いや、シンプルというよりも「自然」という表現の方が当てはまるかもしれない。フリーキーでありながら、実に自然に見えてしまうところがある。自然界に存在しているかのように無駄が無く、有機的で生命力の脈がドクドクしてるんだけど、どぎつくない。恣意的なものを全く感じないのだ。このオーガニックさはそう簡単に出せるものではない。
その「毒」の無さを物足りなく思う人もいるだろう。しかしながら、このように自然体を今貫けるロックバンドはなかなかいないのではないだろうか。強いて挙げるなら、Fleet
Foxesあたりにも通じる揺るがぬ世界観を持ったバンドだと思う。
おすすめ度★★★★(20/02/09)
My Girl
決してメリーアンではございません。マンチェスター出身の5人組。ヴォーカルの声が、ティム・バージェスやイアン・ブラウンに似ているとのことだが、それはあまり感じない。ただ音楽性は幅広く、たまにローゼズがあったり、シャーラタンズもある。若干ロックよりなBDBとでもいえばいいか。器用さを感じさせるが、それが逆にこのバンドの個性を打ち消してしまっているような気がする。いい曲は多い(Cloudy
Lemonade,Summer Laneは名曲)が、これがAlfieというのがない。その辺が寂しいところか。
ピアノを中心としたプロダクションの中、美メロを聴かせるAqualungの2nd。本当に美しい曲を書くのだけど、最近よくありがちなメランコリアではなく、非常にスケールの大きいメロディーを書く。1曲目「Brighter
The
Sunshine」はビートルズのようだし。他の曲でもいいメロディー・メイカーの最良の部分をうまく受け継いだ、心憎いソングライティングを見せてくれる。またヴォーカルもいい雰囲気を持っていて、酒を飲みながら深夜のBGMにもってこいです。。残念なのは、構成的にちょっと単調になってしまっているところか。とはいってもそれなりに工夫しているところは見られるのですが、若干中途半端な印象を受けるので、もう少し極端なアクセントをつけてくれた方がインパクトがあって、アルバムの完成度が増すような気がします。
エイダン・モファットがROに「今宵すべてのパブで」というエッセイを書いていたのがすごく印象的で、興味があったのですが、なかなか手に入らないうちに、忘れていた一枚。1曲目が四つ打ちのディスコポップで想像と違って面食らったが、ストリングスの使い方が絶妙でかっこいい。ちょっとNew
orderの匂いも感じる。アルバム全体としては、他にもMogwaiのようにノイズギターを中心としたナンバーや、音数の少ないメロウなナンバーもあったりとバラエティーに富んでいる。ただ、ストリングスをアクセントとしているところはどの曲にも共通している。ストリングスに関しては、使い方次第ではメロディーの本質的な良さを損なったり、くどくなってしまうという弊害もよくある。Arab
strapもこれだけ、多用されているとその弊害も心配になるが、ストリングスと曲との相性をよく考えた結果なのか、あまりそう感じない。というよりはいい方向に働いていると思う。つまり「ストリングス負け」していないということである。それだけしっかりしたトラックが作られているということで、良くできたアルバムだと思う。個人的には、一枚聞き終えた時点では、お腹いっぱいという感じがしないので、ついまた聞いてしまう。これもエイダンの罠か?

このベスト盤は濃ゆい。酪農家のところで飲む絞り立ての牛乳くらい濃い。これまでの代表曲を集めたディスク1,B面やアルバム未収録曲を集めたディスク2、ともに勢いのあるグッドメロディーが延々続く。今時これだけキャッチーなメロを書けるティムは本当にすごいなと思う。というよりはそのメロディーをこれだけ甘く臆面もなく鳴らせることがもっとすごいと思う。ストレート、ひたすらストレート。このバンドのアティチュードをすべてのバンドは見習うべし。真っ直ぐなことはかっこわるいことじゃないということを教えてくれる。ファンも初心者も買いでしょう。必ず好きな曲が見つかるはず。ちなみに僕のフェイバリットは「Walking
Barefoot」
Ash渾身の4作目。噂通りヘヴィー路線。ジャケットも思いっきりヘビメタ。僕も最初はえらくハードで重くなったなと感じたが、聞き込むとそれほどに重さは感じなくなった。とにかくギターが突っ走る。エモによく見られる乾いたリフではなく、ちょっとメタル寄りのそれである。僕は全然ヘビメタは聴かないんだけど、マイケル・シェンカーとかこんな感じだったような気が(知ってます?)。つまりは、ギター・ヒーローのようなすごくメロディックなギターである。こんだけ弾いたら気持ちいいだろうなぁ。メロディーも噂通りのキャッチーさでメロディアスな曲ばかり並んでいます。TFCと同様に、Ashもメロディーが良くて当たり前なバンドです。
シー・アンド・ケイクのギタリスト、アーチャー・プレヴィットのソロ作。シー・アンド・ケイクはそこそこ好きではあるが、僕にとってこれまでどこか敷居の高いバンドであった。あのシカゴ界隈のバンドの中ではかなりポップで、いろいろなアプローチを試みながらも、非常にベーシックなスタイルの音楽を聴かせようとしている。よってとても親しみやすいはずなのだが、なにかが足りない、そんな思いを持っていた。
以前からシングルが高く評価されていたバンドであったATHLETEのファースト・アルバム。シングルはどれもいいメロディー揃いで期待していたが、その期待通りの素晴らしい作品を届けてくれた。1曲目の「エル・サルバドール」からミドル・テンポの曲が次々と繰り出される。リフレインを多用しながらじわじわと高まっていくメロディーは、確かによく引き合いに出されるペイヴメントなどのUSローファイ系に近い感じである。ただ、彼らのメロディーの方が前者よりも、ずっと聴きやすい。それはポップさと美しさが強調されているからだと思う。サウンド的にはエレクトロニックを上手く使い、不思議な味わいを醸し出している。そして、アルバムを聴いて気づいたのだが、ヴォーカルが素晴らしい。この手のバンドの中では、すごくエモーショナルな歌い方ができている。5曲目「ビューティフル」は特にその男気のある歌が堪能できる。
前作は独特のポップさを持ったメロディー、随所に観られる電子音、そしてソウルフルな歌が不思議に絡み合う様が心地よく、よく聴いた一枚だった。今作は基本線は前作の延長戦であるが、メロディーのスケールが大きくなっている。オープニングの「Chances」はシンプルなピアノから、突如ストリングスが加わり、一気に「泣き」へと展開していくという、Coldplayも真っ青の叙情的な曲で、この曲だけ聴くと非常に安直な変化にも感じるのだが、その後は彼らなりにいろいろなアプローチを試みている。結果的に成功していたりもう一つと感じるものもあるのだが、全体的にはどの曲にも光るメロディーラインがある分、最後まできっちりと聴ける作品に仕上がっている。ただ、最初に述べたとおり前作の延長的な要素も多いので、新しいリスナーを開拓できるような力はないかなと思う。UKで1位になったそうだが、好きな人は安心して聴けるし、求めているレベルには十分に足していると思う。いささか「手堅すぎる」部分が気になるけれど。