27年ぶりの共演アルバム。この二人の共演となると、環境音楽的なものかアンビエントな方向へ行きそうだが、驚くほどしっかりとした歌ものアルバムになっている。
全編がヴォーカル入りで、バーンは大人の風格ともいうべき柔らかいヴォーカルを披露している。イーノが曲という形にしないで録り貯めていたものに、詞とメロディーをバーンがつけていったとのこと。美しいメロディーも魅力的であるが、僕はこのバーンのヴォーカルにすごく惹かれる。時に朗々と、時にファンキーに様々な曲を歌いこなしている。この辺の緩急の付け方はさすがベテランといった感じ。
そして、今作の特質としてゴスペル色が強いことがあげられると思う。バーンはこのアルバムを「エレクトロニック・フォーク・ゴスペル」と称している。実にぴったりと当てはまる言葉だと思う。他にもいろいろ言葉をつけたくなるが、あくまで基調はゴスペルで、そこに対して稀代のミュージシャン2人が味付けをしているのだから、そこは一般的イメージとは異なるものになっていることは想像が付くだろう。
このアルバムは、イーノには申し訳ないが、バーンの類い希なるセンスが爆発しているアルバムだと思う。イーノのバックトラックの中にはもろアンビエントなものもあったりするのだが、実に見事にメロディーを乗せることに成功している。
派手さもないし、カタルシスを感じるような場面もないが、本当に心にしみるいいアルバムだと思う。今、「癒される音楽」を挙げるとしたら、間違いなくこれをおすすめする。
バーンとイーノは飽きっぽい性格で、同じことを繰り返さない主義で知られているらしい。ということはこの路線のアルバムは、もう2度と作られることはないのだろう。そこが残念だ。
おすすめ度★★★★☆(15/12/08)
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