The Enemyの2nd。1stでは激情的に若さをぶつける、クラッシュの音が分厚くなったようなサウンドを展開していた彼ら。そういうストレートなサウンドだけではなく、しっかり耳に残るメロディーもあり、デビューアルバムとしては十分インパクトを与えることができたと思う。
約2年のインターバルを経てドロップされたセカンド。1stの延長ではいけないという彼らの危機意識もあったのだろう。「Music For The People」という仰々しいタイトルであるが、聴けばこのタイトルが決して大げさなものではないことがわかる。それくらいThe Enemyの音楽性は前作に比べると大きく飛躍を遂げている。
ギター中心だったサウンドは、ストリングスやキーボードが増え、音色豊かになった。そして、壮大なスケールを持った曲が増えた。たとえばBlurの「The Universe」のような感動的なシンガロング・チューンLast Goodbye。近年のOasisを彷彿とさせるネオ・サイケ、Silver Spoon。そして、度肝を抜かれたのがSing When You're In Love。この大陸的なナンバー、まるでブルース・スプリングスティーンのよう。正直ここまで音楽性の幅が広がるとは考えていなかった。
いわゆるロックの巨人たちが作り出したビッグサウンド、それがもたらすカタルシス。それらを詰め込んだようなアルバムは、才能はもちろんのこと、若さ故の純粋な信仰がもたらした産物なのかもしれない。
もう少し焦点化されたらという思いはあるが、手垢にまみれていないビッグサウンドをつくる才能は実に貴重だと思う。願わくば幅を広げすぎて、耳障りが良いだけの、どこぞのスタジアムバンドのようにはならないでほしい。
おすすめ度★★★☆(02/05/09)