最近はすっかり「サー・ポール」などと呼ばれるようになってしまったポール・マッカートニーと元Killing Jokeのユースのユニット、The
Firemanの3rd。自分が彼らの音を聞くのは今作が初めて。1st,2ndはアンビエントな作品らしく、そういうのはポールが作っているとなるとかなりの勇気を要する。なので、聴いたことがない。今作を聴こうと思ったのは、ほとんどがヴォーカル入りだということ。ポールのソロだと言っても過言ではないという前評判につられてである。
で、その前評判はほぼその通りだと言って過言ではない。確かに素晴らしい。
1曲目、 Nothing Too Much Just Out of
Sightからして度肝を抜かれる。いきなりブルージーにがなるポールがそこにいるのだ。ホワイトアルバムに収録されている「Helter
Skelter」でのポールのシャウトはめちゃめちゃかっこいいが、66歳のシャウトもこれまたかっこいい。意外とも言えるヘヴィーなナンバーでアルバムは幕を開ける。
3曲目Sing the Changes
はシングル、高揚感あふれるポールお得意のギター・ロックであるがアルバムを通してみると意外と地味に見える。
5曲目、Highwayでも再びブルージーなポールを味わえる。今までもきっとこういう感じの曲をたくさん出していると思われるが、実に新鮮に聞こえる。ポールが生き生きとするのはこういうブルージーなロックナンバーなんだということがわかる。声が衰えてきた、という意見もあるが、さしたる問題ではない。自分がやりたいと思ったものに臆せず挑戦する。若かろうが、名声を極めてきた大御所だろうが、そこが聴き手を感動させるところである。
8曲目Dance 'Til We're High
では久しぶりにポップの魔法を操るポールが見られる。今の季節に合いそうなスイートなポップシンフォニーだ。
個人的には、ポール流スワンプ・ロックの6曲目Light from Your Lighthouse 、ラーガで歌詞が意味深な9曲目Lifelong
Passion が地味ながら好きである。
情報によると、ポールがその日に曲を書き、演奏してレコーディングしていくという形で制作が進められたらしい。そういう「勢いありき」なところがあるためなのか、曲のバラエティーが豊かすぎて正直アルバムのまとまりには欠けるかもしれない。しかし、このまとまりのなさがかえってアーティスト、ポール・マッカートニーの底なしのポテンシャルを証明することになったと思う。
個人的には、前作のソロ「A Memory Almost
Full」よりもずっと好き。かなりユースには失礼なまとめ方ですが、ポールの創作的「勢い」が感じられるアルバムです。
おすすめ度★★★★(10/12/08)
Sing The Changes