Review H - 

Hard-Fi/Haven/Her Space Holyday/The High-Lows/The Hives/Hope Of The States/The Horrors/100S

Hard-Fi
Stars Of Cctv
 rockin' onのCDで紹介されていてすぐさま気に入った。あちこちでもう話題になっているが、確かに「ネクスト・カサビアン」とも言うべき冷めたビートと一度聞いたら耳から離れない中毒性のあるメロディはこのバンドの大きな武器となっている。カサビアンと違うところは、まず彼らほど音楽に「暴力性」が宿っていないこと。これは好き嫌いが分かれるところかもしれないが、Hard-fiのほうがビートにより多彩性を持っているので、やはりカサビアンに比べるとマイルドな印象を受ける。全然違うタイプだけど、ビートの多彩性という点で後期クラッシュを彷彿とさせるところがある。後期クラッシュもビートの面では相当冒険を重ねていた。Hard-Fiはクラッシュほど無茶や冒険はしていないけど、メロディーとビートのセンスは相当クオリティーが高い。「Cash Machine」「Hard To Beat」のような80年代風の哀愁が感じられるナンバーが個人的には好きである。
 ただ、こないだFM聞いていて知ったんだけど、彼らのサウンドは「ディスカ」と呼ばれているらしいですね。「ディスコ+スカ」という意味らしいですが、正直きつくないですか。もうちょっとセンスのあるネーミングをお願いします。
 

おすすめ度★★
★★(05/11/3)

Haven
Between The Senses
 UKでも「大型新人」としてさかんに取り上げられていると評判のHAVEN。シングルは聴いたことはなかったが、ジョニー・マーがプロデュースということで即買い。「シングル曲が秀逸」という評判を聞いていたが、他の曲もなかなか良い。トラヴィスっぽいメロディーの曲もあるし、「パブロ・ハニー」の頃のレディオヘッドを彷彿とさせる部分もある。「ベンズ」もちょっとありか。とにかく小細工なし。美しいメロディーと真っ直ぐなギター、そして伸びやかなうた。クオリティ的にはかなり高いと感じている。それでも本国のある新聞では、同時期に出たThe Electric soft Paradeよりは点数が低かったらしい。なんでだろう。すごくイギリス人好きそうだけど。
  ちょっとだけ気になる点が。ジョニー・マーという人は、Smithsというバンドで、稀代のうたいびとモリッシーの言葉に対して、ギター一本で堂々と渡り合った人である。あの毒々しく残酷なまでに弱者の本質を貫くリリックに少しもひるまない、ある意味強く希望に満ちたギターを奏でた人である。HAVENのギターも素晴らしいのだが、このアルバムを聴くたびにジョニーの影がちらつき、何か物足りなさを感じてしまうのは事実だ。そこに彼らにはもう少し自覚的になってもらいたい。ジョニーのインスパイアを受けてほしい。勝手ながら。そこをクリアすることができたら、次回作はとんでもないことになる。
 おすすめ度★★★☆(02/2/18)


All For The Reason
 いいメロディーの曲をごく当たり前のフォーマットで演奏するバンド。そこには何の革新性もないのだろうが、シンプルであるが故の良さがある。何も考えなくても素直に心に届いてくれるからだ。もちろん心に届くからには、メロディーの質が問題となってくる。力があり、美しさがあり、普遍的な魅力を持っていること。このことが絶対の条件となる。
 Havenはその条件を軽々と超えることのできる、数少ないバンドの一つであると思う。今作でも彼ら特有の叙情的メロディーはこれでもかと言うくらいに鳴り響いている。サウンド的にも前作からは進化を遂げ、アメリカのルーツ・ミュージックの要素もある。1曲目、2曲目などはライアン・アダムスやジョン・メイヤーのようだ。もちろんヘイヴンお得意のメランコリックなナンバーも健在。「Tell Me」のようなグルーヴィーなナンバーも違和感を感じずに聴ける。広がった音楽性が新たな武器となってバンドの力をアップさせているように思う。
 と、あれこれ語るよりも、とにかく聴いてもらったら分かると思う。前作にあった曲のばらつきもないし、2年間苦しい時期(ナットの顔面麻痺など)があったとはとても思えないほど、バンドのグルーヴは瑞々しい。聴けばきっと実感できると思う。
 おすすめ度★★★★☆(04/3/28)


Her Space Holiday
The Past Presents The Future
 マーク・ビアンキのソロプロジェクトであるHer Space Holiday。電子音がたゆたう中、甘いメロディーが奏でられるというこの手のサウンドは聞き手にとってすごく門戸が広いものだと思う。ただ、一見とてもフロア向きなようなサウンドなのに、聞き込むに連れて実はRadioheadの「KID A」のようなヘッドミュージック(脳内音楽)なのではないかと思うようになった。例えばMobyなんかと比べるとフォーマットは極めて近いところにあるのに、Her Space Holidayの音楽はすごく閉鎖性を感じる。でも、この閉鎖性というのは悪い意味ではなく、聞き手によって音楽に想起される心象風景がかなり違うだろうということだ。共有する音楽ではなく、一人一人の感性に委ねられる音楽のように僕には聞こえる。今ipod所有者が激増している。自分の感性のカスタマイズが流行している中、まさにそんな時代にもうってつけな感じのする音楽である。
 細かいことを言うと、過剰なドラマ性でメロディーを展開していくのではなく、じわじわと高みへと上り詰めていくソングライティングはかなり気持ちよい。そして、思ったより無機質な感じがしない。不思議な暖かさを持った音楽である。Grandaddyが好きな人にはお勧めしたい。

おすすめ度★★
★★(05/10/21)

The High-Lows
HOTEL TIKI-POTO
 ライジングサン、今日スペースシャワーで放送していたけど、ヒロトがパンツ脱いだとこはしっかりとボカシが入っていました。やっぱりね。
 とにかく最近の僕にはもう「十四才」で十分です。まさに「ティーンエイジ・シンフォニー」。「あの日のレコードプレイヤーは 少しだけいばって こう言ったんだ いつでもどんな時でもスイッチを入れろよ そん時は必ずお前 十四才にしてやるぜ」このリリックに二十九才の僕はすっかりやられてしまいました。ブルーハーツの頃から「マーシーとヒロトは一体いつまで純粋なものに向かっていく詩、メロディーを書き続けることができるのだろう?」と思っていたけど、ここに来て更にベクトルの勢いを増したような気がします。デビューしてから10数年たっているのにこの充実ぶりは何なんでしょうか?人間こう年を取りたいものですな。ほかにもいい曲たくさんありまっせ。「バームクーヘン」に次ぐ捨て曲のなさ。というか本当に「十四才」だけでも聴いて。
 おすすめ度★★★★★(01/10/7)


The Hives 
Your New Favourite Band
 ポップトーンズ所属のアーティストの中でもこれはかなり素晴らしい部類にはいると思う。なんのてらいもないパンク。速射砲のように繰り出されるメロディーはとにかく気持ちいい。昔ながらのパンクバンドはとにかくたたみかけるような展開が多いのだが、彼らの作品はその「たたみかけ具合」が見事に計算されている感じがする。非常に聞き手のニーズを意識しているような展開なのだ。好きな人はツボ押されまくりといった感じではないだろうか?シンプルであるが、作り手のいろいろな技が施されていて、僕は逆にそこに好感が持てた。次の作品では、大名曲はたまたパンク・アンセムと呼ばれるようなナンバーをぜひ作ってもらいたい。そうなればきっとシーンはすごいことになる。
 おすすめ度★★★★(02/5/07)

Hope Of The States
The Lost Riots
 
 最初のギターの音を聞いた瞬間にどれだけ素晴らしいか分かる作品。決して多くはないが、そんな作品に出会うことがある。そして、このHope Of The Statesの「The Lost Riots」も紛れもなくその一つである。最初のトラックのあまりの壮大さ、じわじわと高みに達する展開があまりに見事なので、全体的にそういうトラックが続くのかなと思っていたら、そうでもなくて意外とバラエティーに富んだサウンドが続く。真っ当なギターロックもあり、美しいスローナンバーありなのであるが、トータルで見るとやはり壮大で圧倒的な音空間を描いている。メロディーもどれもドラマチックで素晴らしい。ただ、いわゆる「叙情的」なメロディーではない。それでもこのアルバムが極めて「叙情的」な作品に聞こえるのは、1曲1曲の起伏の緩急によってもたらされるものだと思う。その点が僕にはすごく新鮮に感じられた。
 それとこれは、歌詞がよく分からないので、推測の話になるが、僕はこの作品に今の黒雲に覆われた世界に対する怒りを感じた。当然、戦争を想起させるナンバーもあるが、それだけではなくそれが未だにありとなってしまう民衆の価値観や、日に日に痛みに鈍感になっていく社会、全てが怒りの対象としてぶつけられているように思うのだ。それだけに、このアルバムには絶望感が漂う。しかしながら、掻きむしるように鳴らされるギターを聞いていると、わずかながらその先にあるものが、見えそうな気がするのだ。まだ、それを知るすべはないのだけれど。
 おすすめ度★★★★☆(04/9/15)


The Horrors
Primary Colours
Surf’s-Up The Horrorsの2nd。今までは「ガレージ・ゴス」というともすれば、ビジュアル的な感じで見られてしまいそうな少々安い括りを受けていたわけだが、今作では大飛躍を遂げている

 聴けば一目瞭然なのだが、Joy DivisionやTelevisionを思わせるようなニュウェーヴ色が格段に強まっている。仄暗い空間に浮かび上がる情念的なサウンド。それがめちゃめちゃかっこいい。
 
 オープニングのMirror's Imageは静かなイントロから、徐々に高揚していき、不協和音と咆吼するギターを伴いながら沸点へとたどり着くその過程が素晴らしく美しいナンバー。2曲目Three Decadesはマイブラっぽいウォール・オブ・ギターノイズと吐き出されるようなヴォーカルが特徴的でガレージとシューゲイザーの融合みたいなサウンド。3曲目Who Can Sayも地を這うようなギターとベースを、ドラマチックなシンセ音が切り裂いていく叙情性を秘めたナンバー。

  と、最初から聞き所満載で耳が離せない。全体的に話すと、まず1曲1曲のクオリティーが非常に高い。全曲シングルカットできそうなほど、キラーチューンの連続である。特にギターとシンセのフレーズが持つ破壊力は半端ではない。聴き手の脳に強引に入り込んでくるような力強さがある。プロデューサーにクリス・カニンガムが名を連ねているからというわけではないが、曲のコンセプトと言うべき音像が強烈に目に浮かんでくるのだ。聴き手のイマジネーションに強く働きかける力を持っているロックである。

 個人的なハイライトを挙げるのは難しいが、やはりエンディングのSea Within A Sea。無機的に走るシンセ音が漲る緊張感ととてつもない高揚感を与えてくれる。そして刹那的な最後を迎える8分近い大作である。

もうこの手の「後追いニューウェーヴ」が出尽くしたかなと思われるかもしれないが、自分たちの狙いがしっかりしていてぶれなければ、これだけすごいものを作れるのである。大傑作。

おすすめ度★★★★★(04/06/09)









100S
OZ
 待望の100S名義の1st。帯にある「ファーストにして、すでにベスト!」というのはアーティスト側にとってはどう感じられるのかわからないけど、確かにこのアルバムは100Sとしては間違いなくベストの域に達していると思う。
 まずバンドのグルーヴがものすごく成長している。以前は「これだったらナカカズが叩けばいいのに」とか思ってしまっていたのだが、今作ではこのメンバーである必然性がサウンドから感じられる。
 そして曲も歌詞・メロディー共に充実した出来映えとなっている。元々ソングライターとしての器量は素晴らしいものを持っているが、今回のアルバムの中では特にシンプルなものの良さがすごく目に付く。例えば「なのもとに」というナンバー。自分に名付けられた「名前」の重さを軽やかに歌っている。そう、中村一義は重いテーマのものを扱っていることが多いが、今作では今まで以上に多様なアプローチを試みている。2重3重の謎かけのような世界もいいのだが、こういう風にさらっと歌われると逆にその裏に見え隠れする大きなものの意味がすごくリアルに感じられる。その「大きなもの」というの「希望」で、現状の世界を誰よりも憂いながら、未来にいつか訪れるだろう正しさを誰よりも信じている。そうでなければ、「あのバカが捨てた僅かな火種/この世界を包む炎へ」という言葉は出てこないだろうし、「扉の向こうに」という曲を書くこともなかっただろう。
 聴き所はもう全編なのだが、個人的には「Honeycom.ware」[以降の流れが最高に好きである。また、時々アルバムに入るWeezerっぽいナンバー(絶対中村一義はWeezer好きだと思います)が好きで、今作では「いきるもの」という曲がそれにあたり、やはりいいです。
 車の中で妻とこのアルバムを聴きました。聞き終えた後に違うアルバムをかけると、妻は「全然違う音楽みたい」と言いました。確かに普通のロックアルバムとは同列に語れない性質がこのアルバムにはあるかもしれません。

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