I Hate This Placeのニューアルバム。ショーン・ナニーのソロプロジェクト。キーボード奏者らしく、チープな音を折り重ねながら美しい世界を描いている。
いわゆる歌ものエレポップではあるが、ダンサブルな要素はこのジャンルとしては少ない方である。むしろ叙情的というか儚いメロディーが特徴的で、よりエモーショナルな面を表現しているように見える。
ポップではあるが、内省的なテイストが端々に漂う。ベッドルーム・エレポップという感じだろう。歌詞の世界も割と慎ましやかなものが多い。比喩的な表現が多いが、結局歌われているのは「僕と君」の関係についてだ。ややもすれば恥ずかしささえ覚えてしまうくらい、「僕」の感情はストレートだ。
よってこのような世界観を表現するには、エレクトリックは非常に適しているのだろう。あふれそうな感情をあえて無機質な音へと変換することで、心地よさを引き出すことができるのだから。そして、感情の冷たさや温かさの微妙な表現も上手く描くことができる。
特に良かったのは、チープなシンセ音でかつての宇宙観を思わせるような空間を作り出しているStars。そしてシンセドラムやギターソロの感じがもろ80年代のThrough
Your Eyes。
曲によってはツボに入るが、もう一押し欲しいなと思うのも確か。流れの変化であったり、アンセミックなものを入れるなど、アクセントが欲しかった。
おすすめ度★★★(27/01/09)
Falling For