Review J - 

James Yorkston And The Athletes/Japonesian Balls Foundation/John Frusciante/Johnny Foreigner/Johnny Marr+The Healers/John Squire/

James Yorkston And The Athletes
Moving Up Country
スコットランド出身のジェームズ・ヨークストンのデビューアルバム。温もりのあるアコースティックな質感が印象的である。シンプルな演奏にシンプルなメロディー。しかしながら、そのシンプルさが逆にジェームズの歌を際だたせていて、良質な歌メロが耳に残る。胸をわしづかみにするようなキャッチーさはないものの、聴くほどにじわじわと染みてくる感じである。ライナーノーツには「タイムレス」という言葉がよく出てくるが、いつの時代でも魅力的に聞こえるであろう、そんな名作だ。
 Beckの「Sea Change」は同じアコースティック主体ながら、どこかクールであるのに対し、今作はとても暖かい。その暖かさは彼にとっては「武器」となるであろうが、表現者であれば今後暖かさ以外のテイストや感情をどのようにサウンドにしていくかが求められると思う。そこに自覚的になった時、彼がどのような成長を遂げるのかがまた楽しみである。

 おすすめ度★★★★(03/1/10)


Japonesian Balls Foundation
azadi!?
 時々高校生くらいの時に聴いていたロックを聴きたくなるときがある。そんな時に僕のリストに必ず入ってくるのが、ニューエスト・モデルというバンドだ。彼らはもう10年も前に解散し、現在はソウルフラワー・ユニオンとして活躍している。
 正直に言わせてもらえば、ソウルフラワーひいては中川敬はニューエスト・モデルの作品を超えるものをまだ作れずにいると思っている。昨年発表された「スクリューボール・コメディ」は久しぶりにスコーンと抜けた快作であり、M-1「サヴァイヴァーズ・バンケット」は、ニューエスト時代を思わせる強いフックを持ったメロディーとソウルフラワーで深化させてきたグルーヴががっちりと決まった涙もののナンバーであった。しかし、それでもまだまだである。ニューエストの2nd「クロスブリード・パーク」、3rd「ユニヴァーサル・インベーダー」、これらの作品は僕らに日本語のロックの臨界点を鮮やかに見せつけてくれた。あの初めて耳にしたときの感動は未だに忘れられない。そこにはジギー・スターダストもヒーローもヒロインも存在しない。一般大衆に向かって「お前らはどないやねん」と言い放つその姿は、いつもいらいらしていた高校生の僕には、何か爽快であった。
 このヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションというのはその中川とヒートウェイヴの山口洋が中心のユニットである。ニューエストのナンバー「もぐらと祭り」「報道機関が優しく君を包む」やカバーの再録もあり、かなり無邪気に今やりたいものをやろうというバンドの雰囲気が伺えるのだが、中川の毒はその中でも健在だ。特にデッド・ケネディーズの「Kill The Poor」は強烈だ。中川の訳詞がとても生々しい。このナンバーだけでも是非聴いてもらいたい。
 おすすめ度★★★(02/6/23)


John Frusciante
The Empyrean

Surf’s Up レッチリのキーマンであるギタリスト、ジョン・フルシャンテのソロ作。ソロとしても多くの作品をリリースしてきたが、今作はこれまでのものとはやや異質なものである。
 アルバムタイトルである「エンピリアン」とは「天、天球」、また古代ギリシャ・ローマでは純粋な光や火に満ちた理想の場所を指す言葉である。ジャケットのテイストからしても、聞く前は勝手にプログレっぽいものを想像していた。結果的にはプログレの要素もあるが、バラエティー豊かな楽曲が並んでいる。それでも、全体のトーンとしては静的で、崇高な雰囲気を漂わせている。
 サウンドの骨格は、基本的にはジョンのギターが核となっている。当たり前であるがジョンが弾きまくっている曲も多い。ギタリストとしてのジョンが好きな人には、特にUnraechableでのギターソロはもうたまらないだろう。相変わらず表現力豊かで卓越したプレイを見せてくれる。
 ティム・バックリィのカバー、Song To The Sirenが秀逸だ。原曲よりもさらに浮世離れしたようなアレンジで、ジョンの歌声も儚さを醸し出していて良い。また、Centralのエモーショナルな感じもまた好きだ。
 観念的な歌詞からは宗教の香りがする。曲名もHeaven,Dark/Light,Godなどそれを匂わせるものが多い。この世の創造について、森羅万象についてジョンなりの答えが各曲に存在している。よって、このサウンドを楽しむには、歌詞カードがあった方がいいような気がする。非常に曲のテイストとリンクしているからだ。
 聴き終わった後に少々重さは残るが、非常に聴き応えのあるアルバム。

おすすめ度★★★★☆(28/01/09)

Central


Song To The Siren


Johnny Foreigner
Waited Up Til It Was Light
 バーミンガム出身の男女3ピースパンド。「Los Campesinos! Meets Dinosaur Jr」こんなコピーが思わず浮かんでしまったのだが、良質のギタポメロディーにつんのめるような演奏、そしてディストーションギターが唸りまくる。
 曲調はパンキッシュだし、演奏だってもろダイナソーながら、できあがったものの印象はかなり「かわいい」。疾走感いうよりは暴走気味のギター・ヴォーカルもざらついた感じはない。The Pixiesあたりだと同じ感じでもすごく凶暴に聞こえるが、Johnny Foreignerのほうがずっとメロディーの方に耳がいってしまい、ポップに聞こえる。

全体的にいうと、ある程度余地を残したハンドメイドな感覚は、The Pastelsを彷彿とさせる。「もっとこうできるのに」あえてそこまでにしない感じ。ダイナソーなんかもそういうところがあるが、あえてラフな部分を残す、「磨かれすぎない」かっこよさがあるバンドである。
  ただ、こういうB級的な線はCYHSYやLos Campesinos!あたりでちょっと出尽くした感じがあるので、核になりうる強烈な印象を残す曲があったら、もっとよかったかもしれない。

 しかしこれで、サマソニの1発目はマリンにしようかアイランドにしようか悩んでしまうなぁ。どっちも楽しそうだ。

 おすすめ度★★★☆(06/27/08)


Johnny Marr+The Healers
Boomslang
 ジョン・スクワイアの復帰にも驚かされたが、これもまた同様のインパクトがあった。個人的に未だにスミス・ブームが続いていて、ジョニー・マーのギターを聴くたびに、「ギターとはこれほどまでに表現が豊かな楽器なのか」といつも感嘆させられている。数多のギターバンドの中で、スミスが未だ色あせることなく輝き続けているのは、モリッシーの希有なヴォーカリーゼーションもさることながら、ジョニーのギターが楽曲に常にジャストな「鮮やかな色彩」を与えていることにほかならない。これはやはりセンスなのだと思うが、ジョニーは単なるソングライターやギタープレーヤーではなく、優れたプロデュース能力を持った男なのである。だから、ソロアルバムも絶対成功すると思っていたのだが、スミス解散からずいぶんとかかったものだ。ザ・ザ加入からエレクトロニック、そしてやっとたどり着いた自身のバンドの立ち上げ。スミスのキャリア以上の年月を経てやっとこの男はまた自分の音を鳴らし始めた。
 オープニングの「Last Ride」を聴いて、まず驚いた。というのは、スミス時代の彼の変化自在なプレイの中で、唯一ないと思われた「骨太感」があるのだ。一瞬「ハリケーン♯1」時代(またはライド晩年)のアンディ・ベルのようなプレイである。2曲目は「マッドチェスター」時代を思わせるグルヴィーな曲。これがかっこいい。ジョニーのヴォーカルもイアン・ブラウンほどではないが、ほどよくヘロヘロ感があって僕は好きだ。構成としては前半グイグイと押していって、後半はいろいろなアプローチを試しながら、グルーヴを深化させていっている感じである。前半の勢いが後半失われるのがやや残念だが、十分に聴き応えのある作品となっている。
 おすすめ度★★★★(03/3/5)


John Squire
Time Changes Everything
 「歌いいじゃん」というのが最初の感想。ボブ・ディランと言うよりは、Waterboysのマイク・スコットに近い感じ。鼻にかかったハスキーヴォイスで、ロックシンガーとしてはうってつけの声質でしよう。その自分の力に自覚的になったからこそ、このアルバムは見事なまでに「歌もの」になっているのだと思う。
 ローゼズ時代からは想像もできないくらいにアーシーな曲もあれば、王道ブリティッシュ・ロックとも言えるような曲もあり、ジョンってこんなに幅広い曲を書けるんだと脱帽してしまった。とはいえローゼズの2ndのころにもその片鱗は見せていたが、ここまでやるとは正直思わなかった。だいぶ周りから自由になったのだろう。ローゼズから10年以上を経てやっと自由になれたのだなと思うと、非常に複雑な思いとなる。
 衝撃度と固有のグルーヴ感において未だローゼズを超えるバンドが現れたとは思っていない。しかし、超えるバンドが現れてほしいともさほど思わなくなった。ジョンにはローゼズとは離れたところでいい音楽を作り続けてもらいたい。
 (02/12/23)

Marshall's House
 ジョン・スクワイア待望の2nd。まさかこんなに早く届けられるとは思わなかったが、まさに今のジョンの音楽に対する姿勢が見事に反映された結果となっている。まず、前作と比べて陽性のメロディーが目立つ。また、サウンドのアイディアも格段と広がりを見せている。「People In The Sun」は米南部のようなアーシーな魅力を持っているし、「Yawl Riding A Swell」はスピリチュアライズドのようなゴスペル風のナンバーでジョンのヴォーカルが見事にはまっている。ギターも実にアグレッシブでこれほど弾きまくっているのは「Second Coming」以来だと思う。この路線は今のジョンの魅力をすごく引き出していると思う。なかなかここまで王道的なギターロックを古くさくなく聴かせるアーティストがどれだけいるか。このヴォーカルといいギターといい、これだけ個性のある人間がなぜにこんなにも寡作だったのだろう。というわけで、このジョンの仕事のペース、作風ともに個人的にはすごく嬉しい。ただやはりこのメロディー、ギターサウンドに、リズム面での強力なブレーンがいたら・・・という思いも尽きることはない。だって、その昔この男は今でも色あせることのない、とんでもないものを創り出したのだから。ライナーノーツにはリアム・ハウレットから誘いを受けているという話があった。実現するとなればとんでもないものができそうだ。
おすすめ度★★★★(04/2/10)
いる

Designed by NEO HIMEISM