レッチリのキーマンであるギタリスト、ジョン・フルシャンテのソロ作。ソロとしても多くの作品をリリースしてきたが、今作はこれまでのものとはやや異質なものである。
アルバムタイトルである「エンピリアン」とは「天、天球」、また古代ギリシャ・ローマでは純粋な光や火に満ちた理想の場所を指す言葉である。ジャケットのテイストからしても、聞く前は勝手にプログレっぽいものを想像していた。結果的にはプログレの要素もあるが、バラエティー豊かな楽曲が並んでいる。それでも、全体のトーンとしては静的で、崇高な雰囲気を漂わせている。
サウンドの骨格は、基本的にはジョンのギターが核となっている。当たり前であるがジョンが弾きまくっている曲も多い。ギタリストとしてのジョンが好きな人には、特にUnraechableでのギターソロはもうたまらないだろう。相変わらず表現力豊かで卓越したプレイを見せてくれる。
ティム・バックリィのカバー、Song To The
Sirenが秀逸だ。原曲よりもさらに浮世離れしたようなアレンジで、ジョンの歌声も儚さを醸し出していて良い。また、Centralのエモーショナルな感じもまた好きだ。
観念的な歌詞からは宗教の香りがする。曲名もHeaven,Dark/Light,Godなどそれを匂わせるものが多い。この世の創造について、森羅万象についてジョンなりの答えが各曲に存在している。よって、このサウンドを楽しむには、歌詞カードがあった方がいいような気がする。非常に曲のテイストとリンクしているからだ。
聴き終わった後に少々重さは残るが、非常に聴き応えのあるアルバム。
おすすめ度★★★★☆(28/01/09)
Central
スコットランド出身のジェームズ・ヨークストンのデビューアルバム。温もりのあるアコースティックな質感が印象的である。シンプルな演奏にシンプルなメロディー。しかしながら、そのシンプルさが逆にジェームズの歌を際だたせていて、良質な歌メロが耳に残る。胸をわしづかみにするようなキャッチーさはないものの、聴くほどにじわじわと染みてくる感じである。ライナーノーツには「タイムレス」という言葉がよく出てくるが、いつの時代でも魅力的に聞こえるであろう、そんな名作だ。
時々高校生くらいの時に聴いていたロックを聴きたくなるときがある。そんな時に僕のリストに必ず入ってくるのが、ニューエスト・モデルというバンドだ。彼らはもう10年も前に解散し、現在はソウルフラワー・ユニオンとして活躍している。
バーミンガム出身の男女3ピースパンド。「Los Campesinos! Meets Dinosaur Jr」こんなコピーが思わず浮かんでしまったのだが、良質のギタポメロディーにつんのめるような演奏、そしてディストーションギターが唸りまくる。
ジョン・スクワイアの復帰にも驚かされたが、これもまた同様のインパクトがあった。個人的に未だにスミス・ブームが続いていて、ジョニー・マーのギターを聴くたびに、「ギターとはこれほどまでに表現が豊かな楽器なのか」といつも感嘆させられている。数多のギターバンドの中で、スミスが未だ色あせることなく輝き続けているのは、モリッシーの希有なヴォーカリーゼーションもさることながら、ジョニーのギターが楽曲に常にジャストな「鮮やかな色彩」を与えていることにほかならない。これはやはりセンスなのだと思うが、ジョニーは単なるソングライターやギタープレーヤーではなく、優れたプロデュース能力を持った男なのである。だから、ソロアルバムも絶対成功すると思っていたのだが、スミス解散からずいぶんとかかったものだ。ザ・ザ加入からエレクトロニック、そしてやっとたどり着いた自身のバンドの立ち上げ。スミスのキャリア以上の年月を経てやっとこの男はまた自分の音を鳴らし始めた。
「歌いいじゃん」というのが最初の感想。ボブ・ディランと言うよりは、Waterboysのマイク・スコットに近い感じ。鼻にかかったハスキーヴォイスで、ロックシンガーとしてはうってつけの声質でしよう。その自分の力に自覚的になったからこそ、このアルバムは見事なまでに「歌もの」になっているのだと思う。
ジョン・スクワイア待望の2nd。まさかこんなに早く届けられるとは思わなかったが、まさに今のジョンの音楽に対する姿勢が見事に反映された結果となっている。まず、前作と比べて陽性のメロディーが目立つ。また、サウンドのアイディアも格段と広がりを見せている。「People
In The Sun」は米南部のようなアーシーな魅力を持っているし、「Yawl Riding A
Swell」はスピリチュアライズドのようなゴスペル風のナンバーでジョンのヴォーカルが見事にはまっている。ギターも実にアグレッシブでこれほど弾きまくっているのは「Second
Coming」以来だと思う。この路線は今のジョンの魅力をすごく引き出していると思う。なかなかここまで王道的なギターロックを古くさくなく聴かせるアーティストがどれだけいるか。このヴォーカルといいギターといい、これだけ個性のある人間がなぜにこんなにも寡作だったのだろう。というわけで、このジョンの仕事のペース、作風ともに個人的にはすごく嬉しい。ただやはりこのメロディー、ギターサウンドに、リズム面での強力なブレーンがいたら・・・という思いも尽きることはない。だって、その昔この男は今でも色あせることのない、とんでもないものを創り出したのだから。ライナーノーツにはリアム・ハウレットから誘いを受けているという話があった。実現するとなればとんでもないものができそうだ。