Mando Diaoの5rd。意外とコンスタントに出し続けているせいか、もう5枚もリリースしているんですね。そうはいっても、破格のロックンロールで北欧から我々をロックの臨界点へと連れて行った1stに比べるとその後は決して満足のいくものではなかった。いきなりすごい物をドロップしてしまった後に陥りやすい袋小路に彼らは見事にはまってしまった。ここまでの変遷には彼ら自身はそれなりに自信を持っていると思う。ただ、それが聴き手の心情とがっちりリンクしていたかというと、少々ズレが生じていたと思うのだ。
前作がもうかなり遠いところへ行ってしまったので、今作は最初買おうかどうかさえ迷っていたところであった。しかし、これは久しぶりにマンドゥが「マンドゥらしさ」を取り戻した作品だと思う。
それでは「マンドゥらしさ」とは何ぞや、ということであるが、僕は「グスタフが吠え、ビョルンが泣いている」この一点に尽きると思う。ソングライターであり、ヴォーカリストであるこの2人の魅力はそこにあると思う。1stのSheepdogではグスタフが暴れ犬のような粗暴なヴォーカリゼーションを見せれば、Mr.Moonではビョルンが男の泣きを哀愁たっぷりに歌い上げていた。こういったある種の二面性が、マンドゥの魅力であった。そして、今作もそこに忠実に作られていると思う。
1曲目Blue Lining, White Trenchcoatの地を這うようなベースラインと、
グスタフの王道のロックヴォーカル。これを聴いてまず安心する。厳ついメロディーに独特の叙情性が重なったいかにもマンドゥらしいナンバーだ。
そして期待しながらも度肝を抜かれたのが、3曲目Gloriaのコテコテの演歌っぷり。60〜70年代の歌謡曲のようなベタベタなメロディー。西城秀樹なんかが歌っても全く違和感のない反則スレスレのナンバーだ。しかしながら、僕はこういうナンバーこそがマンドゥの真骨頂であるように思う。ここでのビョルンの泣きっぷりはもうお見事である。
それでも、これは原点回帰作ではない。あくまでもこれまでの歩みを自分たちのロックンロールへと昇華させることに成功した素晴らしいアルバムだ。
例えば、リードトラックであるDance With
Somebodyはフランツかと思うくらい妖艶な魅力を湛えたタイトでダンサブルなナンバー。これがとてもバンドにマッチした感じに仕上がっている。Mean
Streetはシンプルなロックンロールだけど、メロディーは割とモータウンっぽいポップな感じで楽しい1曲。ラストナンバー、The
Shiningはマンドゥなりのブラス・ロック・シンフォニー。少々くどい感じもあるが、ラストを締めると言う点においてはこれ以外にはないというくらいはまっている。
もっともっと暴れていいんじゃないかとも思うが、久しぶりに抜けの良いロックンロールを聴かせてくれたことは実にうれしい。この勢いを持ち込んだパフォーマンスをサマソニでも是非。
おすすめ度★★★★(03/03/09)
これもまた中毒性が高いアーティストです。あちこちで評判になっていますが、ラップスティールギターの調べと、サンプリングやストリングスを多用したバックトラックに乗せて、美しいメロディーと流麗なヴォーカルを聴かせてくれる。ノルウェー出身らしい極北の冷え切った美しい夜空のサウンドトラックのようだ。特にストリングスの使い方が上手いなと思っていたら、クレジットになんとショーン・オヘイガンの名前が。なるほど納得。
活動停止を発表した彼らの最後(?)のアルバム。この前のミニアルバム「真心」に収録されている曲が5曲入っている。アルバムごとにその作風を変える彼らであるが、今回は「別れの歌3部作」の流れを踏襲している。僕はYO-KINGの声と詞が好きで、桜井がボーカルをとるナンバーはそれほど熱心に聞かなかったクチである。これまでのアルバムに関しても、なにか桜井のナンバーがアルバムのトータル性やクオリティに影響を与えてきたように感じている。傑作「KING
OF
ROCK」はまさにYO-KINGの力がメーターが振り切れんばかりに大爆発したいい例である。しかし、桜井色が強く出てしまうと、真心のアルバムはもう一つの品質となってしまうようにずっと思っていた。つまりYO-KINGのはじけっぷりこそが、真心を左右していると思っていた。
かなり前から話題になっていたが、8月にやっと購入。未だにハマリ続けております。ストロークス、リバティーンズなど新世代のロックン・ロールがここのところずーっとシーンを賑わしている。複雑になりすぎた感のあるロックシーンから、こうしたシンプルかつプリミティブな魅力を持ったバンドがゾクゾクと出てくるのはある意味、自然な流れだったと思う。こういった流れは、きっと今後も繰り返されていくだろう。ただ、その中で人々にインパクトのある作品を残していくというのは実に難しい。セールスの問題ではない。どんなに世の中が変わっていっても、変わらぬ魅力を持った作品を生み出すというのは、ロックが時代性に左右されがちなものだけに難しいと思う。
1st,「Bring Em
In」はかなり衝撃的なアルバムでした。エネルギーに満ちあふれているというか、あるコピーを借りるとすれば「俺は今、ロックがやりてぇのだ!!」状態である。それぐらい、ロックという音楽に自分のありったけの想いをぶつけたとんでもないアルバムであった。そういう意味では、初期ビートルズのピュアさと引けをとらないくらいの美しさがあった。「Sheepdog」も「The
Band」も本当にまばゆくて、最高に格好良かった。
マニックスが好きな人って「ジェネレーション・テロリスト」の頃からのファンも結構いるのだろうか?よくわからないのだが、僕にとってマニックスといえば未だに「4REAL」というイメージがぬぐいきれない。「全世界でナンバーワンになって即解散!」そんなセンセーショナルな見出しとともに彼らは登場した。「モータウン・ジャンク」(これ、一番好きです)というアンセムとともに。No1になって解散する、このことにいったい何の意味があるのか、とも思ったが、「モータウン・ジャンク」を繰り返し聞いていると実は彼らには「これ(解散)以外に意味のあることはない」ということに気づく。初期衝動が燃え尽きようとする瞬間にやめる、あくまで彼らはロックの理想の道を歩もうとしたのだと思った。そして、発売前、渋谷陽一のラジオで何曲か聴いたのだが正直「なんだこりゃ?」であった。元気はいいが、ちょっと安い感じのハードロック風、そんな印象を持った。「モーターサイクル・エンプティネス」は別格であったが、それ以外は明らかに「売れ線ねらっているな」と思った。あの時期待していた人たちはほとんど外されたと思ったろう。そして実際このアルバムはそこそこ売れるが1位になることはなく、しかも本国盤はおろか、日本盤さえ「モータウン・ジャンク」は収録されていなかったのだ。「がっくし」の一言であった。結果的に彼らは解散宣言を撤回し、リッチーを失いながらも国民的バンドへとのし上がっていく。
Manic Street Preachersの9th。前作「Send Away The Tigers」はセールス的にも大きな成功を収め、彼らの復活的作品としても大きな評価を得た。

「サイケデリック」という言葉で語られるバンドはたくさんいるけど、Mercury Revの存在はそれらの中でも孤高のものであるように思う。例えば万華鏡。パーツや色が少なくても織りなす光景は十分に美しく、ちょっとした幻想感を与えてくれる。しかしながら、彼らは自分の万華鏡に止めどなくパーツや色を足していく。もう十分だろうと周りが思っていても止めようとしない。数え切れないほどの音を、信じられないくらいの大音量で奏でてきたのだ。結果万華鏡は誰も見たことがないような極彩色に仕上がる。覗いた人は初めて見る光景に驚き、その正体を知ろうと足を踏み入れていくうちに、自分が今どこにいるのかも分からなくなる。それこそが彼らの体現する「ドリーミー」であると思う。これが癖になる人は、どこまでも彼らのサウンドにひたりたくなる。僕もその一人なのだが。


デンマーク出身のバンドだが、北欧というのは欧米に比べてきっと、表現の縛りが少ないのだと思う。自分たちが好きな音楽、好きなバンドのサウンドを自由にやることができるということで、北欧勢からは時々とんでもなく心のツボをついてくるバンドが現れる。昔スウェーデンにアトミック・スイングというバンドがいたが、彼らはまさにそうだ。まさに反則すれすれのメロディーとサウンド。残念ながら、欧米では評価が低くなりがちである。が、日本も割と北欧に似た自由な土壌があるので、どことなくシンパシーをおぼえるのだ。

「チキン・ゾンビーズ」から、ミッシェルは常に「今これが最高」だという臨界点を常にドロップしてきたバンドである、ということはジャパンに腐るほど書かれているが、僕もおおむね同意見である。ただ、個人的には前作「ロデオ・タンデム・ビート・スペクター」で、そのような進化に一区切りがついたのではないかと思っていた。しかし今作は、その進化の歴史がさらに続いていくのかと思わせる素晴らしい内容になっている。1曲目「ブラック・ラブ・ホール」がかっこいい。上手い言葉が見つからないが、ジャズのインプロヴィゼーション的アプローチも試みながらのハードなナンバーである。
前作「Sabrina
Heaven」と同時期にレコーディングされながらも、ミニアルバムとして発表されたのはなぜだろう?聴く前はそんな疑問もあったのだが、聴いているうちにそういうことはどうでもよくなってきた。どの曲も本当に素晴らしい。速射砲のような攻撃的なナンバーから叙情的なナンバーまで、ここ近年で身につけた幅広さをここでもいかんなく発揮している。しかしながら、器用になったというのではなく、あくまでも表現者として生きていくことを選んだ上での冒険心がそうさせたのだと思う。そんな幅広さがありながら、今回も作品としては見事なまとまりがある。そして6曲というボリュームながら、フルアルバムを聴いているような、そんな満足感がある。
The
Wonder Stuffのフロントマン、マイルス・ハントの新バンドのファーストアルバム。WS解散後は、あまり熱心に追いかけてはいなかったのだが、このマイルス・ハントという男の一本筋が通っているというか、音楽に関しては一切妥協を許さない姿勢に、常にリスぺクトだけはしてきた。解散後結成したVent414はあまり僕好みではなかったのだが、今回のアルバムは彼のソングライティング能力がいかんなく発揮されていて、魅力を持ったアルバムに仕上がっている。
今までMobyというと「テクノ」というイメージが強く、僕はここ近年のテクノにあまり興味がなかったので、聴いたこともなかった。大ヒットした「プレイ」さえも聴いていない。つまり「18」が初体験である。というよりは、MTVで「We
Are All Made Of The
Stars」は何回も見ていた。この曲を「ダサい」「恥ずかしい」といっている人もいるようだが、僕には何か心に響くものを感じた。すごく好きというのともちょっと違う。とにかくMobyの作る音楽が気になるようになったのだ。そこで「18」を聴いてみたのだが、見事にはまってしまった。
僕がMobyを熱心に聞くようになったのは前作「18」がリリースされてからである。それはMobyがより強い表現を求めて、歌詞入りの曲を大幅に増やしたアルバムであり、そのスピリチュアルな佇まいにいたく感動したからである。しかし、この「Hotel」を聴くと「18」はまだ序章に過ぎないという気持ちになってくる。
モリッシーが還ってきた。
「元気モリモリ」・・・そんなくだらないダジャレが思わず浮かんでしまうほど、今のモリ様のいい状態が伝わってくるライヴ盤である。1曲目の「How
Soon Is Now?」は演奏はダメダメなんだけど、モリ様の歌はかつて無いほどに艶っぽくなっている。この年で歌の技術が向上しているのもある意味凄いです。このほかにもいくつかスミスナンバーが聴けるのが今作の売りだとは思うが、正直曲によって演奏のばらつきがある。「Bigmoth
Strikes Again」は途中のギター、ドラムがショボイし、「There Is A Light〜」は遅すぎて・・・。逆に良かったのは「Shoplifters〜」。これはなかなかいい味を出していた。
僕は「Light,Slight,Dummy」が初体験で、とにかくひたすら限界を出し続けるペース全く無視のサウンドは非常に面白くしかもかっこよかった。こういったものが、日本でもごく自然に認知されるようになって、評価されるようになったと言うことも印象的であった。僕の中では今でもモーサムのイメージは「Light,Slight,Dummy」である。崖っぷちをおそれることなく全力疾走でどこまでも走っていくようなそんな感じである。

「音がGrandaddyっぽい」という評判を聞きつけて、なにげに買ったのだがなかなかよかった。正直Grandaddyよりはメロディーに深みがない印象を受けたが、シンセのチープ感の出し方がダサかっこよく、エレポップが好きな人にも広く受け入れられそうなサウンドである。とくにM-2が秀逸。おもちゃ箱を開けたようなポップ小品集。
個人的なことをいうと、Museというのは非常に「びみょー」なバンドである。1st「Showbiz」は、とてもデビューアルバムとは思えないくらい良くできたアルバムであった。キャッチーな曲を挟みながらも、怒濤の世界へとリスナーを誘っていく展開は、非常につぼを押さえているなと思わせ、そこが新人らしからぬ感じがしたのだ。しかしながら、アルバムの後半へいくとちょっとした「胸焼け状態」になる。世界が濃密故に少し「遊び」なんぞもほしいなと思うのだ。2ndアルバムにも同様のことが言えた。ただ、1曲1曲は本当にすばらしく、マシュー・ベラミーのソングライティング能力というのはとても高いレベルにあることは間違いない。なので、これまでの付き合いは、シングル単位でというのが僕とMuseの関係であった。
サマソニ06で見た、2度目のMUSE。始めて見た2000年と比べると、もう別のバンドかと思うくらい。元々スケールの大きさを感じさせるバンドであったが、それからどんどん大きくなり今や得体の知れない強大なパワーを持ったバンドへと変貌した。ただただ圧倒されたことを覚えている
あちらこちらで高評価を受けているTHE MUSIC。バンド固有のグルーヴという点で、ローゼズなどとも比較されている。ただ、これはちょっと違うような気がする。確かにシングルはどれもキラー・チューンともいうべき即効性のあるメロディーと熱っぽいグルーヴが特徴的である。が、グルーヴに関して個人的にはあまり新鮮な感じはしなかった。サウンド以上に佇まいに魅力を感じるバンドだと思う。「The
People」のPVなどはまさに彼らの雰囲気を見事に体現している。ヴォーカルの歌い回しはどことなく、60後期〜70年代のハードロックのようだ(僕はあまり得意ではないが)。
前作はメロディーとグルーヴの質感が見事にマッチした素晴らしいサウンドながら、ヴォーカルの癖や所々でお腹いっぱいになる感じがイマイチ好きになれなかったりして、その、微妙な作品であった。今作は、ヴォーカルの癖はまんま変わらないものの、1曲1曲がよく練られている。とはいえメロディー的には前作の方が王道で即効性があったとは思うが、構成上の強弱の付け方が憎らしいほど上手い。前作のひたすら熱くなる感じはなくて、曲によってひたひたと迫ってきたり、いい加減じらしたところで一気に解放するなど、多様性を身につけたように感じる。きっと彼ら自身が様々なことを表現したくなって、それに見合う表現力を身につけたと言うことなのだと思う。というくらいサウンドのはまり具合が見事だ。聴けば聴くほど深まっていくアルバムだと思う。
