Review N - 

Nada Surf/中村一義/New Order/Nirvana/No Age/NUMBER GIRL
Nada Surf
Lucky

 ブルックリン出身の3人組Nada Surf,通算5枚目のアルバム。春になると不思議とTFCやTravisを聴きたくなる自分なのだが、このアルバムもまさにその「仲間入り」をしそうだ。
  このアルバム、一言で言うと、実にしっかり作られていて、奥深い。
 1曲目「See These Bones」のメランコリックな曲調に、「あぁ、またこの手のバンドか・・・」と思う人がいるかもしれない。メロディーは素晴らしいのだが、やや使い古された感のあるストリングスとアルペジオがちょっと辛いところもある。しかし、2曲目「Whose Authority」からがらりとその印象が変わる。これまた、胸を締め付けるような切ないメロディーと、TFCを彷彿とさせるざっくりとしたギター、絶妙なコーラスワークが一体となった素晴らしい曲。その後もWeezerだったり、Coldplayだったり、良質なメロディーを基調とした「ギターロック見本市」といったところだ。なによりも、メンバーの職人的こだわりが随所に見え隠れするところがよい。そして、一見清涼感を演出しているようで、スリーブを読めば分かるんだけど、その裏には「生」への想いや「死」という一つの運命をどうとらえていくかという重いテーマがある。この作品が節操なき物やありきたりな物に成り下がっていないのは、そういった「隠し味」のレベルが実に高いからだろう。
 ギター・ロックもさらなる多様化を見せつつあるシーンであるが、こういう正統派が評価させる場がもっとあっても良いと思う。少なくとも僕はこのアルバムを全面支持する。

おすすめ度★★★★☆(08/4/01)

Whose Authority


中村一義
キャノンボール
 昨年のロック・イン・ジャパンでトリを飾った中村一義が最後に演奏した曲。今までの彼の歌詞には難解さがつきまとっていたが、今回は至ってシンプルで驚いた。「僕は死ぬように生きていたくはない」「そこで愛が待つゆえに」とてもストレートなメッセージ。ロックがどんなメッセージを投げかけたところで無力感を伴うことは、激烈な2001年を見ればわかることなのだが、どうしても信じたくなってしょうがない、そんな風に思わせられる曲である。希望に満ちた歌詞とメロディー。希望なんてうさんくさいとしか思えない2002年。しかし、もう一度賭けてみたい一縷の望み。そんな黄金律を持った曲である。人間まだまだ終わってたまるか!
 おすすめ度★★★★★(02/1/27)

100S

中村一義というよりは100式のアルバムと言っていいほどバンドとしての連帯感が満ちあふれたニューアルバム。昨年のロック・イン・ジャパンではあまり上手いバンドではなかったので、不安がないわけではなかった。が、やはり素晴らしい作品を届けてくれた。前作「ERA」は彼の空恐ろしいテンションをエネルギーに作られた一分の隙もないアルバムであったが、今作はツアーなどを通し仲間との連帯から得たテイストを随所にちりばめながらも、中村色は損なわれることはなく、彼の新たな一面を垣間見ることができる構成となっている。やはり「ERA」のような完全無欠のロックは恋しいが、こうしたリラックスした彼もいい。決して上手くはないが、固有のグルーヴ感を持ったバンドであるし、中村一義というソングライター、シンガーを十二分に生かしている。意外に100式は中村一義にとっての「Eストリートバンド」なのかなとも思う。
 おすすめ度★★★★(02/11/4)


New Order
Get Ready
 8年ぶりのニューアルバム。個人的にはerectronicの「TwistedTenderness」が好きだったので、メロディが立ったこのアルバム、とっても好みです。ビリー・コーガンとプライマルが参加していますが、ビリーは地味。一方ボビー参加曲はニューオーダーよりもプライマルの新曲みたい。捨て曲なしの傑作。「RUN WILD」の歌詞に「神がおまえを連れ去りに来ても、俺は絶対におまえを離さない」というのがあるのですが、これほど説得力を持って響いてくるバンドはそうそうないでしょう
おすすめ度★★★★★(01/8/26)


(the best of) New Order
 TSUTAYAでなんとなく買ってしまった。NEW ORDERの代表曲を一通り収めたベスト盤。僕がNEW ORDERを聞き出したのは「REPUBLIC」の頃から。なので、コンパクトな曲とギターが心地よいなー、というバンドであった。しかし、知ってのとおり、彼らといえば「ロックとテクノの融合」「シンセを取り入れたダンスビート」といったキーワードで語られるバンドであり、このベスト盤もそういった魅力がぎっしりと詰まっている。現代のテクノやエレポップの世界に彼らがいかに影響を与えたかが、よくわかる好盤。
 おすすめ度★★★(01/12/2)

Waiting For The Sirens' Call
 やはりこのバンドはすごい。革新的な面ではなく、徹頭徹尾自信に満ちあふれた音であるからだ。自分たちが鳴らしている音楽に絶対的な信頼を置いている。メンバーとの不仲がたびたび囁かれようとも、彼らが「New Order」を易々と手放すことはないだろう。
 前作同様にバーニーのギターは歌以上にベタベタにメロディアスなフレーズを奏で続ける。これがさほど突出しないのはピーターのベースラインがこれまた激しくメロディアスだからである。僕にとってNew Orderはこの二つがあればよい。メロディー的にも非常にポップで、聞きやすさという点では過去最高であると思う。そういった意味では今作も十分に楽しめる作品であるし、個人的には前半のしなやかな流れが凄く気に入っている。
 ただ、このバンドの不思議なところは、これまでとさして変わらないような曲であっても、常に「時代の音」として鳴り響いている点だ。ギターサウンドとエレクトリックの融合、アイディア的には凄く先鋭的な物ではない。それでも彼らは巧みに「時代の音」を作り上げる。聴いていて凄くリアルな物を感じるのだ。New Orderの音に僕は「傷」のような物を感じることがある。それは彼ら自身が負った傷であったり、自分自身の傷でもあったりする。思わず隠したくなるような、早く癒えたいと思っている傷を、彼らは容赦なく「ほら、見ろよ」と言わんばかりにさらし出す。自分たちの創り出す音楽で。思わず知らないふりしたくなるような事実。現実としてそんなものはゴロゴロと転がっている。しかし、その「傷」こそが彼らの音楽のリアルさを証明しているのだ。きっと彼らはこの先も「時代のど真ん中」の音を作り続けていくだろう。そしてそれは本当に素晴らしいことだ。

おすすめ度★★★
★☆(05/4/17)

Nirvana
SLIVER〜THE BEST OF THE BOX
 3枚組(DVDを合わせると4枚)のBOX SETをまとめたものであるが、未発表曲が3曲入っているという点で、やはり好きな人には買わずにいられない内容となっている。その未発表曲であるが、1曲目の「Spank Thru」はNirvana以前のカートのバンド、Fecal Matter名義のもの。1985年の音源(デモ)である。冒頭のヴォーカルが、ルー・リードのようだ。次第にカートらしくなっていくが、サウンド同様荒削りさが目立つ。9曲目「Sappy」は録音に相当の時間を掛けたそうだが、結局完成には至っていない曲。カートらしいリフレインを多用した、なかなか良い曲だが、カートのヴォーカルが全然聞こえてこない。ミックスの関係かもしれないが若干迫力に欠けるところがある。そして14曲目「Come As You Are」。あの名曲のデモ版であるが、「Nevermind」の曲はすべからく、デモの方がかっこよく聞こえる。やっぱり僕は、ブッチ・ウィグのプロデュースがあまりしっくり来ない。完全に「In Utelo」派である。このようにデモを大量に聞くとそのことが如実に感じられる。基本的に僕はこういったデモテイク集のようなものにあんまり興味がないんだけど、このNirvanaのBOX SETをはじめとしたデモ集を聞くと、カートの書く曲そのものの良さが半端ではないことに気づく。そういったことを確認するのにはオリジナルよりもうってつけなのかもしれない。
 

おすすめ度★★
★★☆(05/11/14)

No Age
Nounds

Surf’s Up LA出身、2人組のユニットNo Ageのデビューアルバム。いろんな雑誌の2008年ベストアルバムの1枚として結構取り上げられていたので、気になっていたところ。日本盤がついにリリースされた。
 サウンドの特徴は、DIY精神あふれるガレージロックなのであるが、メランコリックなメロディーがガレージの厳つさをほどよく押さえているので、わりとポップな印象を受ける。そして、時に激しいバーストを見せるギターはガレージ風というよりはシューゲイザーの影響を色濃く感じる。
 曲調は短いものが多く、もろガレージなものもあれば、抑えめなサイケテイストで上手く引いたりとアルバム全体の流れにおいていい緩急をつけている。

 重厚なギターが唸りを上げるMiner、メランコリックなメロディーにやけっぱちな歌が乗っかるTeen Creepsや、疾走感あふれるシューゲイズなサウンドのSleeper Hold、Here Should Be My Homeあたりが自分の好みであるが深海を漂うようなディープなサイケデリア、Things I Did When I Was Deadもいい味を出している。
 アイディア的にもそんなに斬新ではないし、ソニック・ユースやマイブラに影響を受けた真っ当なインディ・ロックなのだが、不思議なことにこのバンドはものすごく強い光を放っているように見える。
 その源は、この二人が自分たちのポテンシャルを全方位的に解放しているところにあるのだと思う。当然ながらロックバンドの可能性は人数によって決まるものではない。才能の有無であったり、飽くなき音楽的欲求だったりするわけだが、この二人は「二人である」ということに対して何も感じていないと思う。自分たちの音楽性を爆発的に表現することしか考えていないのだと思う。ただ、この最小単位に近いフォーマットでそれをやると、もうたまらないくらいに刺激的な音に仕上がるわけだ。

 ロックの持つ熱量や速度が漲ったこのアルバム、確かに素晴らしい。アメリカン・インディ好きにはたまらないと思う。

おすすめ度★★★★(07/02/09)



NUMBER GIRL  
NUM HEAVYMETALIC
 とても官能的なアルバムであると思う。サウンドや歌詞に和的な要素が加わり、デイヴ・フリードマンのプロデュースによって、今まで体験したことのないような濃密な世界が構築されている。これまでも官能的な要素はあったが、今回の作品は「和」の持つエロスが加わり、よけい官能的である。
 ナンバーガールを「ギターバンド」として捉えるのは、はっきり言って浅はかであると僕も思う。しかし、彼らの研ぎ澄まされたギターサウンドは、僕にとって非常に魅力的なものであった。特にセカンド「SAPPUKEI」は、当時洋邦を超えて一番かっこいいギターが鳴っている作品であった。そのギターが今作ではだいぶ後退してしまった。自宅で三味線を弾きまくっていたという向井秀徳の現在の志向が表れた作品であるが、個人的にはやはりギターの威狂う作品を期待してしまう。本当に好きなバンドであるだけに、ちょっと残念である。
 おすすめ度★★(02/5/08)


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