NIKKI |
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くるりの最新アルバム。もうあちらこちらで言われているとおり、「さよならストレンジャー」以来のメロディーが立ったアルバムである。一重にメロディーが良いといっても、くるりの違うところはあらゆるタイプのグッドメロディーが散りばめられているというところだ。「Bus
To Finsbury」は60年代UKを代表するバンドKinksのようなポップかつタイトなメロディーだし、「Baby I Love You」はBeach
Boysのようにハーモニーを効果的に使った柔らかなメロディーを紡いでいる。「雨上がり」という曲は個人的にはチューリップのようにも聞こえる(岸田はチューリップ好きらしい)。僕が一番好きなのは「お祭りわっしょい」という曲でアルバム中一番ラウドな曲である。本当にバラエティー豊かに「良い曲」の詰まったアルバムだと言える。 これだけのものを作れるだけでもすごいと思うのだが、個人的にはバンドサウンドというかグルーヴの面で少々物足りなさが残るのも事実である。先日コンビニで突然店内放送で「街」が流れたとき、思わずそこに立ちつくしてしまった。この曲が収録されている「図鑑」や前作「アンテナ」では、単純に聞き流せないインパクトがすごくあるのだが、このアルバムにはそういう要素が希薄であるような気がするのだ。サポートとしてツアーも一緒に回っているクリフ・アーモンドのドラムはライヴでもCDでも迫力があり本当に素晴らしい。全曲叩いているわけではないからかもしれないが、作品としてみると音のエッジがもう少し立っているともっとすごいアルバムになっていたと思うのだ。まぁ、好みもあると思うが個人的には「アンテナ」の重厚さに、このメロディーが乗っかったらなぁと思う。 それでも、我が敬愛するTFCの新作アルバムがもうひとつグッと来るものでなかったのに比べると、「よくぞやってくれた!」と拍手を送りたくなる。やっぱりメロディーというものは大切だ。そういった基本に忠実に作られたアルバムだと思う。そう、基本ほど難しいものはないのだ。 おすすめ度★★★★(05/11/29) |
魂のゆくえ |
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くるりのニューアルバム。初回限定盤には「謎の板」なるものが封入されていて、それを使った謎解きは今も続いている。くるりと僕たちをつなぐストーリーなのらしいが。 アルバムごとに明確なスタイルを持っているくるりであるが、今回は「ルーツロック」という今まででは一番地味なフォーマット。ギター・ベース・ドラムのシンプルな構成に時々メロウなピアノが重なる。 驚くべきは、シンプルながらも力強いバンドサウンドだろう。もはやメンバーは2人だが、今までで演奏に一番グルーヴを感じる。サポートメンバーとの演奏であるが、まさに「ルーツロック」的な阿吽の呼吸を感じる。 つまりはそこが、このアルバムの聴かせどころだろう。前作でクラシックの中に普遍性を見つけ、自分たちの音楽を解放しようとしたが、そこで得た自信がこの素直なバンドサウンドへ結実したのだろう。派手さも奇も衒わない。それゆえ渋いという感想が多いが、確かにそういえるかもしれない。それでも、何度も聴きたくなるだけの吸引力を持ったアルバムである。個人的にはこれまでで一番好きなアルバム。 |