ノルウェーのエレクトロユニット、ロイクソップのニューアルバム。通算3枚目となる「Junior」であるが、この後に「senior」という新作のリリースを控えているという。タイトルから予想されるように、「Junior」と同時期に制作されながら、違った側面を持つアルバムのようである。
で、この「Junior」であるが、全体的に音は非常にポップで歌メロが立ったものが多い。そして女性ヴォーカルをフィーチャーしたものが半分を占める。なので曲単位で聴くと、どこかの女性ポップアーティストの曲なのかと思ってしまう。エレクトロ的ではあるが、歌メロの完成度の高さからどちらかというとポップソングとしての機能性を持った曲が多いように思う。
ただ、それだけであれば自分の食指が動くわけがない。自分にとってこのアルバムの魅力的なところは、バックトラックの大胆さである。
例えばThe Girl And The
Robotは「ぶっちゃけ、もろYMOではないですか」というくらい、オリエンテッドなシンセ音が鳴らされている。この「やりすぎ」一歩手前な感じ。このスレスレ感が非常に心地よいのだ。全体的にハッピーなムードを持った曲が多いのだが、そういう大胆なアレンジによって、その裏にある悲哀をうまく表現していると思う。アルバムを聴き終わった後に感じる不思議とメランコリックな気持ちは、彼らの狙っているところのように見える。
個人的には歌のないものが好みであるので、タイトルそのまんまのリードトラック、Happy Up
Hereやアルバムの中でダークなテイストを持つSilver Cruiser、ストリングスが効いた壮大なナンバーRoyksopp
Foreverが好き。歌入りでは前述のThe Girl And The Robot、ちょっとひねた感じのIt's What I Wantがいい。
おすすめ度★★★☆(12/04/09)
Radioheadのファンサイト「There
There」の管理人キューさんに教えてもらったスウェーデンのバンド。ネオアコ系のポップなメロディーをシューゲイザーのようなリバーブ・ディレイのかかったギターノイズで味付け、というのがこのバンドの基本でしょう。マイブラ、ライド、スロウダイヴのようなたゆたう甘美感はしっかり出されていて、確かにシューゲイザー好きにはツボの一枚であると思う。ただ、これらのシューゲイザーバンドの音を聞いていると、ヘッドホンにつながれた自分をノイズと甘いメロディーの波に乗せて、途方もないところに連れていかれるのではないかという気分にさせられることがある。つまり日常的な空間から非日常的な音空間へと引きずり込まれるような感覚に襲われるのだ。この一種病的な感覚こそシューゲイザーに自分がはまる理由なのではと思う。それに比べると、このThe
Radio
Deptにはそのような感覚はやや希薄である。これは彼らの音が良くないという意味ではなくて、彼らはシューゲイザーの影響を受けながらも、重きを「歌」においているような気がするからである。だから、それらのバンドよりも、The
Radio
Deptの歌はすごく耳に残る(ポップでリリカルな良い曲を書くんです。また、リフレインの使い方も上手い))。ギターノイズの残響ではなく、あくまでメロディーが残るのである。だから、シューゲイザーとは違う意味での中毒性があると思う。
新作を出すごとに好きになっていく。レディオヘッドとは僕にとってそういう存在である。「KID
A」には本当に完膚無きまでに叩きのめされたし、「アムニージアック」では「KID
A」で築かれた世界がさらにパラノイア的な拡がりを見せ、何かこうまるっきり手に負えないとでもいうか、ため息すら出ないような圧倒的な世界観を提示した。聴き手の想像力を遙かに超えた音を期待できる唯一無二の存在としてリスナーの期待も大きい分、批判を受けやすいのも事実。特にギターサウンドの復活を望む声が多い。僕も確かに「The
Bends」「OK.COMPUTER」のような、狂おしいギターサウンドには大きな魅力を感じていたが、自分の中では「それを望むのはやはり野暮だろう」と感じていた。というのは、レディオヘッドそういった聴き手の単純な欲求や想像に落ち着くような表現者ではないという確信があったからだ。
やはり、ジョン・フルシャンテという男は素晴らしい。ジョンが復帰しての2作目。前作「カリフォルニケイション」は以前の彼らからは想像できないほどの達観したプロダクションによる作品であった。バンド固有の熱っぽいグルーヴ、ファンクネスを若干押さえたかわりに、メロディーがぐっと際だち、非常にメロウな(テーマは暗いが)作品となった。個人的にはR.E.M.の「OUT
OF TIME」と同じ感触を覚えた。今作はその延長線上とも言えるが、メロウ度はぐっと上がった。1曲目「BY THE
WAY」。このイントロを聴いて何も感じない人は、おそらくこの作品を理解することはできないだろう。シンプルであるが、力強いリフから静かに歌い出すアンソニー、そして怒濤のファンクへとなだれ込む展開。まさに一分の隙もない。このあとも、素晴らしいメロディーの曲が続き、最後まで飽きない。落ち着き過ぎとも言えなくはないが、完璧なアルバムであると思う。ただ、昔のレッチリが好きな人には今回も辛い展開だろう。ああいう音を鳴らすバンドもそうそういないだけに。
待ちに待ったR.E.M.の新作。28年というキャリアを誇る彼ら。とっくにシーンから遠ざかってもおかしくないほどであるのに、未だロック・シーンの一つの指針であることに驚きを覚えてしまう。
もう解散してしまったが、Atomic
Swingや一時期スウェディッシュ・ポップという言葉が生まれたように、スウェーデンという国はいいセンスを持った人たちが多い。イギリスやアメリカのアーティストがなかなか手が出せないところを、思いっきり自由にやってしまうようなところがある。わかりやすく言えば「〜風」と呼ばれるのを恐れないところがある、と言えばいいか。
前作は見事に期待を裏切ってくれたリチャード。もちろん悪い意味で。擁護する人もいるがやはりあれは失敗作であったとぼくは断言したい。これがあの「ビター・スゥイートシンフォニー」「ドラッグス・ドント・ワーク」と同一線上に並ぶとはとても思えなかった。もちろんリチャードも意図的にねらっている部分もあったとは思うが、ヴァーヴに受けた感動から比べると余りにも寂しかった。雑誌等では次作もかなり愛に溢れたスゥイートな作品となるという感じで取り上げられていた。
Rideが1990年から94年にかけてBBCラジオ出演時のセッションが納められた1枚。初期の名曲「Like A
Daydream」で幕を開ける今作は、前半はセッションという状況がもたらす「やさぐれた」演奏とでも言うのか、とにかくバンドの勢いを感じる構成になっている。そして後半からは「Carnival
Of Light」あたりからの落ち着いたサイケデリックを醸しだしつつ、最後はまるでTFCかと思うくらいギタポな「I Don't Know Where It
Comes
From」で終わる。1st以降は変化していくサウンドスタイルに批判的な声が多かったが、こうして聴くと後期の曲もそんなに悪くはない。とはいえ個人的には頭から3曲目「Perfect
Time」までが、このアルバムのハイライトであると思う。というくらい、この3曲は素晴らしい。