Silversun Pickupsの2ndアルバム。前作Carnavalも良質な楽曲が並んだ好盤であったが、2ndではさらなる飛躍を遂げている。
グランジの影響をもろに受けたようなディストーションギター、咆吼するハイトーンヴォイスなど、確かに「スマパン」という単語が浮かぶ。この辺は前作と同じであるが、今作では全体的にサウンドのアグレッシブさが増し、スケール感がアップした。
ディストーションのテイストもシューゲイザーというよりは明らかにグランジ寄りで、荒ぶる感情を音のざらつきへと変換しているようなエモーショナルさを感じる。
ストリングスの絡み方がスリリングな The Royal We ,ディスコティックなベースラインから極みへと上り詰めるGrowing Old Is
Getting Oldなど楽曲の幅も広がった。そして、良質なメロディーは失われておらず、更なる冴えを見せている。
また、ヴォーカルの方も歌い方に余裕が出てきたというかちょっとエロティックな雰囲気さえ出てきた。これが非常にこのアルバムのポイントになっていると思う。ビリー・コーガンの場合、やり場のない感情のエクスプロージョンゆえに、あのスタイルが生まれたのではないかと思う。それくらいの必然性を持って「あの声」は聴き手に迫ってきた。Silversun〜の場合は、そういうところよりももっとテクニック的な意図を感じる歌声である。
そこをどうとらえるかだと思うが、僕は今の形がバンドの「自然な姿」だと思うし、その姿は凛としていてとても美しいと思う。
おすすめ度★★★★(02/05/09)
自分が音楽にのめり込むきっかけとなったアーティストはもうまぎれもなく幼少の頃聞いたサザンの「勝手にシンドバッド」である。あのメロディーは自分の中の「脳内メロディー」といってもよいもので、生まれたときから頭の中にあったようなそんな感覚を覚えた。それ以来自分がどんな音楽を聴くようになってもサザンの存在はかわらずそこにある。自分がほとんど邦楽を聴かないときでもサザンだけはよく聴いていた。そして、この佐野元春も。日本語のロックが初めてかっこいいと思えたのは佐野元春の曲だ。「Visitors」のかっこよさは今でも色褪せない。「SOMEDAY」はリアルタイムではなかったが、僕は「Visitors」というアルバムで、初めてロックとラップが融合している音楽を体験した。今でこそ、あまり語られることはないが、やはり誰も通らなかった道を開いた開拓者なのだと思う。その後も、アルバムが出るたびに買っていたが、このアルバムが出るまでの4年のインターバルはこれまでにない長さであった。不安もあったが、1曲目「月夜を往け」を聴いた瞬間に吹き飛んだ。全体的に言うと、曲自体や曲のつながりにあまりストーリー性はなく、とにかく今自分が「こういうものをやってみたい」というロックがバランスよく並べられている。「Rock'n
Roll
Night」的な元春の真骨頂というべきナンバーは見あたらない。しかし、安易にそういうものに頼ろうとしないところがこのアルバムの良さを引き立てていると思う。つまり、佐野元春というアーティストに対する絶対的信頼に値するものがこのアルバムには存在しているのだ。それは、いつでもロックの可能性を信じ貪欲に取り組むという表現者としての姿勢である。そこだけはデビューの頃から変わっていないと思う。メロディーの冴えという部分では、若干苦しい部分がないとは言えないが、それでもサウンドのクオリティーの高さは素晴らしい。それは、名うてのミュージシャンが脇を固めていることとは別次元での話だ。
個人的にはトータスにあまり興味がないが、Sea And
Cakeは結構好きである。やはり前者に比べると圧倒的に聴きやすい。今作も、この聴きやすさ、気持ちよさはもう抜群だ。ギターのカッティングはどこか懐かしさを感じる。説明すると、スミスとかエコバニのような80年代のギターロックのような質感を感じるのだ。または、当時のラフ・トレードのバンド群の音のような。ただ、Sea And
Cakeの場合は、そのギターが世界と対峙するためのものとしてなっているわけではなく、あくまで音響的なものを考えての事だと思う。音楽の質を高めることを追求した上でのことだろう。当然そのようなメンバーの意図がアルバムの中で十分に発揮されていて、クオリティーは本当に高い。メロディーもポップであるし、サム・プレコップの歌も素敵である。
ノッティンガム出身の6人組のデビューアルバム。メロディー的にはポストパンク的な感じのものが多いが、どのトラックもみごとに叙情的な仕上がりになっている。ここでポイントになるのは心を打つ叙情性はどのようにして生み出されるかと言うことだ。例えば曲の展開であったり、メロディーの美しさであったり、ストリングスの使い方であったりなど、よくあるのは一つ爆発的にいいものをフィーチャーするやり方である。TFCの場合は圧倒的な曲の良さであろう。また、ディヴァイン・コメディーはニールの歌とメロディーの絡み方であろう。とうていまねできないような圧倒的なクオリティーを提示することによって深みのある叙情性が生まれるのではないかと思う。
ジャケットがかわいい、Shinsのセカンドアルバム。ジャケットのかわいさ通りのポップさを持ちながら、いろいろなアイディアで聴き手に迫ってきます。ビーチ・ボーイズやニュー・ウェイヴ、パンク、またはクイーンなどおそらく自分たちが慣れ親しんできた音楽であり、自分たちが手本とするものをどうやって表現していくか、このアルバムにはそんな彼らの格闘の様子がよく伝わってきます。ジャンル的にはパワー・ポップなのでしょうが、わかりやすさが強調されたバンドが主流となっているパワーポップの世界で、この癖のあるサウンド・メロディーは異質な存在とも言えそうです。即効性はあまりありませんが、1曲1曲のアイディアの絶妙さが聴き手を引きつける、そういう魅力を持った一枚です。ただ、聴き手の素養に左右される部分もあるのではないでしょうか。そこが心配ですが、とかく良いメロディーを追求してしまう僕のような人間にはすごく新鮮に聞こえる作品です。
シガー・ロスの新作。アイスランドではなく、世界各地でレコーディングされたとのこと。その影響があってか、今作はそれまでにない解放感のあるメロディーと演奏が聴ける。
以前からずーっと気になっていたバンド。特に「The Closer You
Get」が傑作との評判が高かったので、この3rdも大変気になっていた。よくサイケデリックとパンクの融合というタームで語られていたが、このアルバムでは実に幅広い音楽性を持っていることが伝わってくる。1曲目「So
Close」から4曲目「Flypaper For Freaks」(これすごい好きだ)まで聴いてみてほしい。見事にバラバラである。2曲目「I.O.U.
Love」(これ意外と好きだ)では、意外にポップなつくりのサウンドであったり、3曲目「All My New Best
Friends」ではストリングスも入り、壮大なスケールのナンバーである.こういったものも挟みながら、彼らの本流であるバキバキのギターロックも随所に展開されていて、飽きることがない。。スピリチュアライズドが駄目という人もこれは結構聴けるのではないだろうか。個人的にはノイジーでたたみかけるような曲がかっこ良いなと思う。ラウドなだけではなく曲もしっかりしているので、メロディーとサウンドがはまったときは、それはもうかっこいい。大変沸点の高いバンドである。これはもう「The Closer
You
Get」聴かねばならないと思っている。
メンバーも減り、ジャケットも地味になり、しかも1曲目「Untitled」は安いリズムボックスのイントロから始まるなど、非常に不安な立ち上がり。個人的には世間で評判の高い「The
Closer You Get 」よりもその後に出た「The Way I Feel Today
」の方が好きで、あのポップ感が失われていないのはいいけど、このトラックの貧相さは何とかならないかと思っていたところ、2曲目「Sometimes I Feel
Like..」で劇的な変化を見せます。重くサイケデリックなメロディー、そしてSix By
Sevenワールドの始まりを告げる、落雷のようなギターノイズ。格好良すぎです。3曲目は一転してサニーサイド・ポップと思わせつつ、徐々に音を分厚くしていくこれまた彼ら得意の展開。太陽が燦々と輝く世界から,混沌とした世界へと引きずり込まれていく感触がサイケの特徴であるが、そういう意味では、とことんサイケデリックなアルバムだ。そしてシングルにもなった「bochum」の素晴らしいこと。状況的には決して追い風はまだ吹いてきていない。それでもこの曲のメロディーのように彼らの姿勢は前向きだ。「今に必ず飛び立ってやる」そんな気概がびしびしと感じられる。きっと彼らは、追い風など必要としないだろう。これだけ素晴らしい作品を作ることが出来るのだから、自分たちで着実に足を進められるはずだ。2004年に生み出された最高に美しいサイケデリックアルバム。断然支持します。
The
Reindeer Sectionのメンバーとしても活躍しているSnow
Patrol。グラスゴーのバンドらしく、フックのあるメロディーを作らせたらお手の物で、1曲目「How To Be
Dead」から琴線メロディーの連続。サウンド・プロダクションとしてはバラエティーに富んでいて2曲目「WoW」は同郷のPastelsやEugeniusのようにも聞こえるし、5曲目「Spitting
Games」は「Bandwagonesque」時のTFCのようでもある。共にグラスゴーのバンドであるが、あの一派に通じる門戸の広いサウンドが特徴的であると言える。7曲目「Run」は英国でもヒットしたが、それに値するべき素晴らしい曲である。目新しさはないが、昔から親しんできた感じのする妙な懐かしさがある。グラスゴー好きなら間違いなく買いの一枚であり、絶対に気に入る一枚でもある。
サニーデイの解散には本当に驚いた。正直言うと、もう一生このバンドは続くのではないかと思っていたからだ。やはり並々ならぬ期待を常に抱いていたバンドであったので、解散後の活動も厳しく見ていきたいと思っている。
曽我部恵一バンド、1stなんだからもちろん最高傑作。曽我部のソロキャリアの中でも最高傑作だろう。
曽我部恵一BAND、待望のセカンド。全ての曲が一発録り。じっくり作品を作っていくことよりも、今の自分たちをどれだけリアルにスイートに表現するかということに命をかけるソカバン。その速度感がめちゃめちゃロックンロールなのである。爽快なのである。
Sonic Youth3年ぶりのニューアルバムは20年ぶりにインディーズからのリリースとなった。サーストンはライナーノーツの中で、レーベルのことを「がんじがらめの収容所」と表現しているが、最近は彼らにとって居心地のいいものではなかったのだろう。前作「Rather Ripped」も素晴らしいアルバムであったが、今作を目の前にしてはいささか印象が弱くなってしまった。
日本が誇るもののけバンド、ソウル・フラワー・ユニオン。今回はカヴァー曲を中心とした作品ということだが、むしろオリジナル曲が素晴らしい。
前作は、カバーと新曲で構成されていたが、今作はライブと新曲が半々の構成となっている。正直、新曲がもっと聴きたいのだが、彼らの今のモードが「自分たちの”いい状態”を、できるだけリアルに届ける」といった感じだから、これがベストと判断したのだろう。
待ちに待った、ソウルフラワー4年ぶりのフルオリジナルアルバム。全14曲、70分以上の大作である。ソウルフラワーは聞き手にとって特別な存在であることが多いのではないだろうか?というのも強烈な個性と、濃厚なメッセージを持ったバンドであるからだ。何を歌いたいのか、これほどはっきりさせているバンドはそうそうないだろう。ただ、伝えたいことがあまりにも濃厚故、聞き手を時には選別しかねない危険性もはらんできたように思う。本人達はインタービュー等で強く否定してきたが、かくいう自分もどうもソウルフラワーが苦手な時期があった。苦手と言うよりも、この音楽の中に自分の居場所がないような気がしたのである。そういった気持ちを完全に払拭してくれたのが「Screwball
Comedy」というアルバムであった。このアルバムを聞いて感じたのは彼らの視点がぐっと大衆よりになったということである。今までは革命家の演説のように聞こえたメッセージが、飲み屋でぼやくオヤジくらいに平易に聞こえるようになったのだ。これは決してレベルが下がったということではない。僕たちにとって社会情勢や平和について考えを巡らせることはそんなに多くはないと思う。そんな中でふと考えることは割とたわいもないような発想でしかない。しかし、これこそが僕たちにとってはリアリティーのある言葉なのだと思う。シロップ16gはそういった僕らのリアリティーを見事に表現しているバンドである。決して崇高な理想を声高に叫ぶことが正しいのではない。オッサンのぼやきや、トイレの落書きにこそ真のメッセージがあるような気がするし、ソウルフラワーもそれを見事に表現できる、いや表現すべきバンドなのだ。
前作は非常に話題になっていたが、僕は全体的に散漫な印象を抱き、なんとなく器用な若者たちが小手先で作っているような作品と感じた。ただ、音のセンスについては非常に光るものがあったので、大きな深化を期待して聴いてみたのだが、まさに期待通りの作品を彼らは作ってくれた。1曲目「Motiveless
Crime」から、サウンドにドラマチックな要素が加わり、聴き応えがあるという点で大幅に成長した。2曲目なんて初期U2のようでもある。以前の彼らからはちょっと想像できなかった音だ。1曲目から4曲目までは本当に圧倒される。中盤からはややゆったりとした感じとなり、トラックも抑えめのアレンジとなっていくのだが、この辺が僕には少々苦しく感じた。後半は正統的なギターロックへと流れていき、これはなかなかよい。全体的には前作を遙かに上回っていると思う。僕としては1曲目から4曲目までのスケールの大きいトラックがすごく良かったので、このテイストを中心としたアルバムを是非とも作ってもらいたいなと思う。ミューズのようにとことんやってしまえばいいんじゃないかな。
3年ぶりのサザンのシングルは、大衆の期待に見事に応えたキラーチューン。ここまで露骨に来るとは正直面食らったが、「自分たちのやりたいことをやる」という欲望と「勝ち続けたい」という欲望がほどよくブレンドされた、いいシングルとなったと思う。もうかなり前だが、桑田佳祐が意図的にサザンを「海」「夏」というキーワードの「呪縛」から解き放とうとした時期があった。ロッキンオン・ジャパンで「サザンは夏を捨てた」と発言したこともあった。今でも彼ら自身は「夏のバンド」というようには考えていないと思う。しかしながら、ポップソングが世の中で単なる「消耗品」とならぬための最善の努力を桑田佳祐は払っている。というよりは、そういう生き方しかできないのだろう。日本のポップス史上、デビュー以来「勝ち続けてきた」唯一無二のモンスターバンドとして君臨し続ける姿は、僕にとっては感動的だ。

まず今年のベスト5以内は間違いのないところ。すごい作品である。ベタであるが、バンド名のようにとてもスピリチュアルな音楽である。ゴスペルコーラス、ストリングス、近頃のロックアルバムにはもう当たり前のように取り入れられているが、なにか作品の中で甘さや美しさを作り出したいために利用されていることも少なくない。しかし、この作品では「これしかない」という必然さをもって鳴り響いている。「The
Long And Winding
road」のストリングスとは訳が違うのだ。意志を持った言葉と、意志を持った音楽、そしてこれらを結実しようと真っ正面から取り組んだジェイソン・ピアーズのピュアネス。まさにため息しか出てこない。感動の大作である。
前作「Let It Comes
Down」ではまるで今そこで神と正対しているのではないかというくらい敬虔でぶっ壊れたゴスペルを奏でていたジェイソン・ピアーズ。言うまでもなく大傑作であるが、今作は再びガレージっぽさが強くなっていて、何よりも驚いたのが1曲1曲がコンパクトなサイズに納められていると言うことである(レコーディング期間も3週間と、彼にしては異例の短さだ)。しかしながら、あの怒濤のサイケデリアは健在である。ただ、短いのは非常に聞きやすくはあるけれど、Spiritualizedに関してはどうしてもボリュームを求めてしまうので個人的にはやや不満である。やっぱり、一種の「過剰さ」を求めてしまうのである。「宇宙遊泳」しかり「Let
It Comes
Down」しかり、「ちょっとやりすぎなんじゃないの」とさえ思えるところが魅力でもあったので、次回作はぜひ。
スピッツのアルバムは買うことを躊躇することがない。スピッツのような良さを持ったバンドは皆無であるし、アルバムの質の高さはもはや間違いのないものだからである。いったい草野マサムネという男は、どこまで素晴らしい曲を量産し続けるのだろう。この新作「三日月ロック」もまさに絶品である。「インディゴ地平線」から「ハヤブサ」における濃密な流れを経て、今回はある意味「自然体」のアルバムとそんな風に言えるのではないだろうか。個人的には「インディゴ地平線」のあのいびつな感じが好きだったのだが、「三日月ロック」はそういった部分があまり感じられない。しかしながらよく聞き込んでいくと、あのいびつな感じはやはり健在であった。「ローテク・ロマンティカ」の詩なんか圧巻である。いつもこの「いびつさ」について考えるのだが、うーん上手く表現できない。「名前を付けてやる」と同じくらい好きなアルバムである。
基本的にスピッツのアルバムとは安心して買えるものである。どのアルバムももはや「天才」としか言いようのない極上のメロディーとへんてこな歌詞がいい具合に溶け合っている。どのアルバムもだ。しかもどの作品にも微妙に変化があって、新鮮な気持ちで聴ける。そしてこのアルバムでも1曲目「春の歌」からそのスピッツワールドは全開である。ただ、これまであったサウンド面の変化は今までの流れから比べると特に見つけることが出来ない。5曲目「ナンプラー日和」は三線がフィーチャーされた沖縄風メロディーであるが、特に強烈なインパクトを残すまでには至っていない。しかしながら、少し驚いたのが2曲目「ありふれた人生」の歌詞だ。「ありふれた人生を探していた/傷つきたくないから/君といる時間は短すぎて/来週まで持つかな」という歌詞で始まるのだが、拍子抜けするくらいストレートだ。これまでどことなく変態的な匂いさえ漂わせていた歌詞が、今作ではあまり見られないような気がする。今までよりも聴き手に強いイメージを与える詩とでも言おうか、個人的にはこういうスピッツも大いにありだと思う。メロディーは相変わらず本当に素晴らしい。シングル「正夢」なんかは、草野マサムネにしか書けない大名曲である。これだけ普通に捨て曲無しのアルバムを生み出せることに毎回感動させられる。
タワレコでは、VERVEやCOLDPLAY、TRAVIS等と一緒に置かれていました。この中で、あえて近いものを選ぶとしたらVERVEかなと思うのですが、ちょっと違うような気もします。メロディはやや泣きで、アコギと唄中心の作りもなかなかかっこいいです。ただ残念ながら、「これは名曲」と呼べるものがなかった。まだ若いんだし、これからという気もするが。ただ、ソングライティングの力には可能性を感じるので次回作が楽しみ。絶対いいレコードを生み出せるバンドです。ちなみにプロデュースはスティーブ・オズボーン。今年は彼が流行りそう。
1stの時はTravisやColdplayと比肩されるくらい盛り上がっていたStarsailor。最近、やや地味だなぁと思っていたらすばらしいアルバムを届けてくれた。2曲ほどあのフィル・スペクター(彼は「Let It
Be・・・Naked」のことをどう思っているのだろう)がプロデュースしたということくらいしか話題になっていなかったようですが、はっきりいってこれはいいです。前作は高い評価を受けていましたが、個人的にはメロディセンスが光るもののもう少し曲のバラエティーが必要ではないかと思っていました。今作はそんな私のような人の願いをまさに叶えたように、バラエティーに富んでいます。その分ポップになったといえるかもしれません。一曲目「Music
Was
Saved」はタイトルは重いのに、めちゃくちゃ明るいポップチューン。もういきなり度肝を抜かれましたが、個人的には大正解だと思います。
NYを拠点に活動しているStillsのデビュー・アルバム。何でもエコバニの前座などもつとめたことがある彼ら。確かにエコバニのようなソリッドな感触を持ったギターが耳につく。現在のシーンは、何か変わったアプローチを探そうと懸命であるが、彼らは驚くほど直球だ。ストレートなヴォーカル、ストレートなメロディー。そのストレートさが聴き手の心に容赦なく刺さってくる。ギミックなしに感動させる力を持っていると思うし、そのことはこの作品を聴けば明らかだ。非常に瑞々しくて、かっこいいロックがここにある。僕は結構やみつきになっている一人であるが、UKロックが好きな人は、この手の音は絶対好きなはず。
これ、結構売れているみたいですね。だって、僕の住む田舎のCDショップにもあったもん。ヴエルベッツとかストゥージズがよく引き合いに出されていますが、ヴェルベッツとは違うような気がする。でもカッコイイロックンロールであり、メロディもよい(ライブ合唱系)。特に8曲目と11曲目がいい。惜しいなと思うところは、もう少し統一感を出してほしかった。(とはいっても、この微妙な統一感のなさが彼らの魅力か)5曲目「someday」はいい曲だが、ちょっとポップすぎる感じが。次のアルバムが勝負作だね。裏ジャケのメンバーかっこいい。
新しいロックンロール・ジェネレーションの旗手として、ストロークスの果たした役割というのはすごく大きなものであったことは現在の音楽シーンを見てもよくわかる。個人的にはその後出てきたバンドのほとんどには興味がないのだが、こういった初期衝動的なロックンロールというのはこれだけ複雑になった社会の中でも非常に有効であるという事実はすごく興味深い。そして、僕もストロークスの1stには結構やられたクチである。単なるガレージパンクというのではなく、かつての音楽が持っていたメロディーの力や、たたずまいを含めたメンバーの表現者としての魅力が感じられたからだ。ロックンロール・ヒーローという陳腐な言葉も彼らには意外となじむ。
Mando Diaoのグスタフの弟達のバンド。ジャケットを見ておわかりの通り、佇まいは兄貴と同じ。60、70年代のロックの最良の部分をベースにしているあたりも似ている。ただ違いとしては、マンドゥが1stでそこにパンク的疾走感を加えてロックへの初期衝動度を過剰なまでに引き出したのに対し、彼らは過去の財産をいろいろな解釈の元に聴かせようとしている点であろう。
初めて聴いたときの感想は「あぁ、ついにあちら側にいってしまったなぁ」というものであった。そう、R.E.M.の「Out Of
Time」を聴いたときの感想に似ている。つまり余計なものは一切そぎ落とされたようなストイックなサウンド。その様子はまるでこの世に存在しないかのように透明である。ついにその境地に達してしまったのか、「スリーアウトチェンジ」の頃から考えると、今の彼らの姿は想像がつかない。2作目からのテクノ的アプローチは今作でも健在であるが、必要最低限に抑えられている。この感じが逆に彼らの世界に深みと広がりを与えているように思う。散文的な歌詞もしかり。シンプル・イズ・ベストを地でいっているような作品である。
前作「Rings Around The
World」から聴きだした人間なので、偉そうなことは言えないのだが、「Rings〜」は彼らにとって覚醒のアルバムだったと思っている。時に涙が出そうなほど美しく、またコミカルな面を見せながら、彼らはアルバムの中で世界を駆けめぐった。その蹂躙具合が痛快だった。それまでの作品が「変わった」とか「へんてこ」といった言葉で語られていたのに対し、「Rings〜」は、ビートルズやビーチ・ボーイズなど過去のロックの名作と肩を並べられるくらいの、「本格派」の作品であると思う。
Super Furry Animals、9枚目のアルバム。1年半と割と短いインターバルでドロップされた新作である。その前作「Hey Venus」は、かなりポップな音を鳴らしていて個人的には好きだったんだけど、従来のファンはどう受け止めたのか気になる作品でもあった。
最近邦楽がつまらない。本当に「聴きたい」と思えるようなものが少ないのだ。もともとヒップホップはほとんど聴かないし、よくチャートに入っているうすっぺらい「青春像」を歌っているバンドたちはどうにかならないものだろうか。具合が悪くなってくる。
4曲入りのシングル。1曲目「パープルムカデ」は少しローファイの入ったこれまでにないタイプの曲。詞もこれまでの作品に比べると、幾分感覚的な言葉が断片的に現れる感じになってきている。2曲目は「シロップ節」とも言えるような、ミディアムなギターナンバー。3曲目「回送」はエレクトロな曲ながら、メロディーがもろシロップであるので、全く違和感がない。というよりは、非常にいい味を出している。4曲目「根腐れ」は「俺の魂は 根腐れを起こしてしまった」という言葉から始まる弾き語りのナンバー。
実は以前シングル「My
Song」のレビューを書こうとしてどうしても書けなかったことがある。「あなたを見ていたい その場にいれる時だけ 裸を見ていたい 言葉はすぐに色褪せる」あまりにもストレートなラブソング。名曲「Reborn」を凌ぐ傑作だと思うのだが、シロップの中で、この曲がどう位置づけられるのかやはり僕には分からなかったし、この曲の裏にあるだろうものを一生懸命読み取ろうとしたが、何も分からなかった。