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![]() 雑誌なんかでは「ロック色が強い」ようなことが書かれていたが、さほどロックな感じはしない。どちらかいうと全体的にざっくりとした風通しの良いポップで構成されている。 このバンドにおいては、キャッチーでポップなメロディラインはもう当たり前のこと。ただ、これまで売りでもあった特徴的なシュガーコーティングはほどほどにして、素材の良さで勝負しようという今回のプロデュースは成功だと思う。ともすれば近作で感じられた過剰な甘さがとれたように思う。もちろんこれは好みの問題であるが、個人的にはこれくらいすっきりしている方が、このバンドの本質や良さが伝わるのではないかと思う。 ただ、これはジレンマであるが、その「すっきりさ」のために、強烈に耳に残る感じはやや後退した。いい曲揃いなのだが、聴き終えたあとにどことなく物足りなさがあるのも確か。あまりに淀みなくスマートなので、アルバムの流れに変化をつけるなど、そういう工夫があればなと思うところもある。 それでも、バンドの高いポテンシャルを十分に感じられるアルバムである。今のサウンドにポップの毒気が加われば無敵だろう。それは次への楽しみにとっておこうと思う。 おすすめ度★★★☆(18/10/08) |
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![]() 今作のプロデューサーはトータスのジョン・マッケンタイア。ここでジョンはおそらく彼らが望んだであろう仕事をきっちりとこなしている。シカゴ音響系の財産を彼らのメロディーとの相性を考えながら、絶妙なチョイスで取り込んでいる。個人的に最初聴いたときは彼らの売りでもあるザックリしたギターが全然なく、やけにアメリカ的なドライさが耳について物足りなさを感じたのだが、よくよく聴くと今作ではそのギターサウンドのはいる余地があまりないことに気づいた。つまりこのサウンドは、ジョン・マッケンタイアの趣味というよりは、今回の彼らの書いたメロディーがもたらした必然なのだろう。ノーマン、ジェリー、レイモンドの3人は今までも多くの名曲を生み出し今作でも素晴らしい質を保っているが、自分たちの癖に頼って曲を書くのではなく、それぞれが常に新しい形を求めているように思う。それが今回サウンド面の変化にがっちりはまっている。見事だ。まだ当分彼らの新作が届くのを楽しみに待てそうだ。「Man-Made」を聴きながら。 おすすめ度★★★★☆(05/6/4) |
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![]() 作風としては、ジャドのディランとルー・リードを足して2でわったようなヴォーカルが、TFCのオーガニックなバックトラックと良く溶け合っていて、非常に面白い。TFCについてはメンバーがいつもとは違う楽器を演奏していたりと、リラックス、そして楽しみながら演奏している様子がうかがえる。曲もインプロヴァイズしながら作ったということで、いつものTFCサウンドに比べると、実験的な部分もあったりする。つまりいつもの完璧なメロディーやアンサンブルではなく、微妙にはずしているところがあるのだ。作り込んだところがないぶん、それがジャドの歌声に良くマッチしている。歌だけ聴けばシンプルで穏やかだ。 しかし、それだけでは終わらない。すごいなと思うのは詩人としてのジャドである。彼は歌詞を作るときに、その場ですらすらと言葉を出していくのだそうだ。つまり即興的に紡ぎ出していくのだ。しかしながら、決して適当なのではなく鋭い歌詞を書く。〈そして僕たちは闇雲に進む/ビートルズを引用すれば「派手にやれ」さ/ジョンを引用するなら「そうそう、その調子」/ポールならば「そう、うんそれでいい」/ジョージならば、ただの「そうだ」/リンゴならば「まあ、そんなもんかな」/ピート・ベストなら「何て言えばいいの?」/僕だったら「僕も何て言えばいいの?」〉(ピート・ベストはビートルズのデビュー前のドラマー。デビュー直前になってメンバーから解雇された)人生のビッグチャンスを逃した男。自分ではどうにもならないところで、道を曲げられてしまうこと。僕らなんて、はっきり言えばピート・ベストみたいなものだ。いやピート・ベストにさえなれやしないのが真実だろう。僕らはきっとどこかで人生を「つかみ損ねて」いる。少なくとも自分はそうだ。だからジャドのこの歌詞には胸を打たれる。 おすすめ度★★★☆(02/3/7) |
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![]() 当然の事ながら、どの曲もグッド・メロディーである。ピアノのフィーチャー度が高いサウンドはトラヴィスやコールドプレイよりもKeaneを彷彿とさせるが、彼らのようにエモーショナルに自分の感情を表現するのではなく、あくまで押さえた形での表現がされている。そういう意味では、やはりコールドプレイに近いのだろう。つまりどんなにギターがメランコリックにかき鳴らされても、ファルセットヴォイスで唄われても、感情をこちら側に飛んでくることはない。あくまで彼らと聴き手の間をたゆたっている感じなのだ。 課題としてはもっともっとバンド自身の表現力の幅を広げるべきだと思う。アルバムの中でもう2,3違ったタイプの曲があれば、飽きの来ないアルバムになっただろう。残念ながら、アルバムの終わり頃には若干食傷気味になってしまうのだ。そこを打破するためにも、スタイルの拡張は必然的なものになるだろう。そしてその結果は次のアルバムに求められるだろう。例えば、Travisが「12memories」で挑戦したこと、Cpldplayのニュー・アルバムがこれまでとがらりとスタイルを変えているであろうということ。これらは表現者としては至極真っ当なアプローチである。そこで彼らが冒険を試みながらも、心の琴線に触れるような音楽をまた生み出せるのか。まだまだ見守っていく必要がある。 おすすめ度★★★★(05/3/9) |
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![]() 1曲目「Runaway Feeling」から見事にやられた。ハーモニーが美しすぎる。2曲目「I Can't Remember」。もうノックアウトに近いです。メロディー切なすぎ。泣きすぎ。今回のアルバムでは3人で曲を作ったそうだが、主にメロディー作りはマシューが行ったらしい。この「I Can't Remember」、「100%Fun」収録の「Smog Moon」以来の泣きっぷりです。この後も、美しいメロディー、そして絶妙のコーラスがたっぷりとフィーチャーされた曲が続く。後半ちょっと飽きてしまうところもなくはないが、マシューファンとしては、彼の「泣きメロ」を充分堪能できます。かなりレトロチック(もろCSN&Yだし、バーズっぽさもある)な音ですが、こういうのも悪くありません。 おすすめ度★★★☆(03/8/9) |
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![]() おすすめ度★★★★★(02/2/11) So Much For The City ![]() 今回のアルバムも、これまでのシングル同様、クオリティの高い曲が並んでいる。60〜70年代のウェストコーストサウンドとでもいうのだろうか、爽やかなメロディーとコーラスを基調としながらも時々叙情的な所も聴かせ、なかなかつぼを押さえている。全体を通すと、若干一本調子に感じられるところもあるが、デビューアルバムとしては素晴らしいと思う。現実逃避でビーチに行きたい人には是非お勧めする。 おすすめ度★★★★☆(03/8/5)
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![]() おすすめ度★★★☆(03/12/2) |
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![]() 彼女はこれまでも、オリジナルアルバム以外にも「絶頂集」「唄ひ手冥利」のような企画的アルバムを出しているが、僕にはそれらの作品がどうにも「ガス抜き」のようにしか見えなかったたちで、実際は違うのかもしれないけど、やはりこれだけ濃密なものを作り続けるためにはこういう作業も必要なのだろうと考えていた。 しかしながら、この東京事変は彼女の中でそういう位置づけではないだろう。まず驚くのが、各メンバーのプレイヤビリティーあふれる演奏だ。特に1曲目から「遭難」までの流れは、猥雑でしなやかなグルーヴを描いている。一ロックバンドとしてとてもかっこいい。勢いがあって、ラフながらもアンサンブルとしてしっかり決まる、これがこのバンドの強みだろう。椎名林檎のバックバンドではなく、各プレイヤーの「顔」が見える演奏である。椎名林檎の所信表明のために作られたバンドだというのに不思議であるが、まぁ、変な話椎名林檎の負担は軽くなったのではないだろうか。これだけ生き生きした林檎嬢を見るのは久しぶりであるような気がする。まだ「新境地」といえるほどの世界観は提示できていないと思うが、東京事変としての音楽はこれでいいのだろう。ソロでの緊張感あふれる感じも捨てがたいのだが、この肉体的なグルーヴは大きな武器だ。 おすすめ度★★★☆(05/1/5) |
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![]() 1曲目「Quicksand」は、力強いピアノから始まるが、これまでの繊細な作りとは違って美メロながらずいぶん骨太な印象を受ける。明らかにトラヴィス節ながら、無骨な感じだ。2曲目「Beautiful Occupation」も同様な印象を受ける。尤もこの曲はイラク戦争における理不尽な行為を歌った曲。プロテストソングと言っても過言ではない。これまでのトラヴィスであれば、汚れた世界に美しい花を敷き詰めていくアプローチであったが、今作は汚れた世界の根本を見つめ、そこに一つ一つ美しい花の咲く種をまいているような感じなのだ。よって、同じ美しい音楽ながら、感じ方がすごく違う。今作では奥の深さがすごく感じられるのだ。セルフ・プロデュースの影響もあると思うが、トラヴィスは新たな扉を開けたように思う ただ、好みとしては評価が分かれるところだと思う。僕は結構好きだけど「The Man Who」と比べるとどうかなぁ。今回も1番好きなのは「Re-Offender」だったりするし。この曲は「これぞ、トラヴィス」って感じの曲です。 おすすめ度★★★☆(03/11/30) |
Ode To J.Smith |
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![]() オープニングである「Chinese Blues
」から、腹にズシッと来るドラム、重々しいギターリフで、これだけ聴いたら絶対誰もTravisだとは思わないだろう。メロディーラインはややメランコリックな線を残しながらも、硬派な1曲に仕上がっている。そして、2曲目「J.
Smith 」ではクラシカルな野太い男性コーラスまで入るという、男臭いというか意図的に重く仕上げようとするねらいが感じられる。そして、3曲目「Something
Anything
」は、これまたやや乱暴なギターリフで、メロディーはかなり面影があるものの、これまた感傷に浸るような余地なくタイトに仕上がっている。 従来のTravisが好きだという人は6曲目「Last Words」からやっと安心できる。これはまさに「Travis印」とも言えるメランコリアが爆発する1曲、次の 「Quite Free 」もこれまでの彼らから全く違和感がない、アコースティックな温もりを持った1曲だ。また、ボーナストラックの「サラ」もピアノだけのシンプルな演奏ながら心にしみる。 というように、ガラリと印象を変えた曲と、ステレオタイプな曲とがこのアルバムには混在している。個人的にどちらが好きかと聞かれたら、やはり従来のタイプが好きと答えるだろう。 それはつまり、これまで彼らが生み出してきた作品が抜群のクオリティーを誇っているからだ。極上のメランコリア、繊細なアレンジ。傑作「The Man Who」から「叙情派ロック」みたいな言葉が生まれるほど、Travisはその道のど真ん中を歩いてきた。そしてまた、その後を通れるバンドもいなかったと思う。数多のフォロワーを生み出しながら、彼らに追随できるほどの力を持ったバンドはそうはいないだろう。 それだけ今までの作品が自分にとってインパクトがあるだけに、アルバムをトータルで見るとまだやっぱり馴染んではこないのが正直な感想。それでも、このバンドに対する自分の信頼は微塵も揺らがないが。 おすすめ度★★★☆(10/08/08) J.Smith |
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彼らが叩きつけるのは、近年とくとお目にかかれなかった正統派ブリティッシュロック。さすがはリヴァプール。 タイトなビートにポジティヴなメロディー。小細工は一切ナシで、「素材で勝負」みたいな。このサウンドを聴いて、誰もが思い浮かべるのが、The La'sであろう。サマソニで登場したときは姿格好までThe La'sであった。 とにかくここまで徹頭徹尾グッドメロディーにこだわって作られた作品は、なかなかないだろう。それは、思えば60年代のUKバンドにとっては当たり前のことであったはずだ。ビートルズ、ストーンズ、ホリーズ、ハーマンズ・ハーミッツ、キンクスといった名だたるバンドはみんなメロディーで勝負してきた。強いて言えば、僕はメロディーこそが音楽を構成する要素で一番強い魔法をかけられるものだと思っている。メロディー至上主義かもしれない。そして、Troubadoursのフロントマンであり、ソングライターでもあるマーク・フリスもきっとメロディーに対するこだわりは尋常ではないと思う。目新しさや斬新なアイディアはないが、メロディーの完成度は実に高水準。先人の教えを忠実に守っていくことがむしろ彼らの使命のようにも思える。 「名曲」揃いなのは間違いないが、惜しむらくは「超名曲」と思わせるようなものが1曲ほしかったこと。そうなればアルバムの流れがもっと豊かになったと思う。それでも、リヴァプール好きな人、最近のUKロックはなんだか小難しいなと思っている人は絶対に聴いてほしい。 おすすめ度★★★★(10/09/08) |
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![]() とはいえ、いわゆる今のガレージ系というものはすべからくブルースの奔放なところとロックのグルーヴの融合が感じられるわけで、22−20Sはとりわけそのブルース的要素がよりわかりやすい形で出ているということは間違いないだろう。それでも僕のような人間がすんなり聴けてしまうのは、3ピースバンド特有の演奏の緊張感が漲っているからだろう。1曲目、ドラムの音が聞こえた瞬間からそれは分かる。また、1曲1曲がコンパクトにまとめられているところもいい。結果、このバンドの勢い、ライヴでの雰囲気がアルバムにすごく反映されていると思う。この先Gomezのようにならないことを祈っています。 おすすめ度★★★★☆(04/11/6) |
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![]() おすすめ度★★★★(03/9/10) |