Review U - 

U2
U2
How To Dismantre An Atomic Bomb
自分が小中学生の頃から、U2は世界でも重要視されるバンドであった。特に中学生だった頃「Joshua Tree」が世に出されて、アメリカでもメガセールスを記録するバンドとなり、日本でも一気に知名度が上がった。音楽だけではなく、ベルリンの壁崩壊に伴い、彼らの政治的態度までが注目を集めるようになった。そんな中、常に刺激的な作品を世に送り出してきた彼らであるが、僕はそれほど彼らの音楽に夢中になったことはない。「Rattle And Ham」以降はほとんど聴いていなかった。確かにかっこいいバンドではあるけれど、バンドの存在がどんどん巨大化していく中で、彼らの奏でる音楽は当時の僕には窮屈に聞こえたのだ。そんな彼らと再び向き合うことになるのは前作「All That You Can't Leave Behind」であった。「Beautiful Day」から始まるこのアルバムはまさにU2のメンバーの顔が見えるアルバムであった。等身大という言い方は少々安直であるが、肩肘の力がいい具合に抜け、ボノの歌、エッジのギター、ラリーとアダムのリズム隊の音が伸びやかに聞こえてきた。今でも時々聴く素晴らしいアルバムである。
 では、今作はどうだろう。前作よりはまた気合いを入れ直したように、アクレッシヴなナンバーが多い。でも以前のような暑苦しさは自然と感じない。エッジが今までにも増してギターを弾きまくっていてかっこいいのだが、U2のキーパーソンとしての自分の役割をよく分かっていて、曲によってはボノよりも雄弁にこちらに語りかけてくる。スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースということで、若干のあざとさが見られるのが個人的にはマイナスポイントなのだが(これはスティーヴのせいだと思う。彼のプロデュース作品によく見られるあざとさである)、それでも変に小難しくせず、スタジアム・バンドとしての立場と自分たちの表現したいことの折り合いを上手くつけているあたりは見事だ。
こういう音楽をすんなりやれてしまうバンドは僕はやはりすごいと思う。

 おすすめ度★★★★(04/12/24)

No Line On The Horizon

Surf’s Up U2,通算12作目となるニューアルバム。前作が5年前ということで、並のバンドであれば久しぶりという感じもするのだが、U2くらいになるとあまりそういう感じがしない。むしろ5年くらい開いている方が、より完成度の高いものを作ってくれたんじゃないかという期待を抱かせる。しかも、すでにメディアでは「新展開」「衝撃作」といって言葉が並んでいる。実際、リードトラックであるGet On Your Boots がこれまでのイメージを覆すような曲であったので、アルバム自体もかなりの変化が見られるのではないかと思っていた。

 ダニエル・ラノワとブライアン・イーノというかつての黄金コンビ、初期のU2サウンドを形成した立役者スティーヴ・リリーホワイト、そしてBEPのウィル・アイ・アムという、すごそうでよくわからないプロデューサー陣。いったいこの4人のプロデュースがどのような融合を見せていくのか、そこが楽しみであったのだが、できあがったものは実にU2らしいというか、王道中の王道とも言うべき小細工なしの骨太ロックであった。

 アルバム自体はクラシカルなタイプの曲とニュータイプが混在した構成になっている。ただ、トータル的な印象では僕はクラシカルなタイプの曲の方が耳に残った。ベースがドライブし、ドラムがバカスカ鳴り響くGet On Your Boots やブルージーなグルーヴがThe Charlatansを思わせるStand Up Comedyなどよりも、80年代に回帰したようなNo Line On The HorizonやMagnifisentのほうが、「この時代にこれが聴けるのか」という新鮮さがあった。当然のことながらどの曲もよく練られているというか、「衝撃作」と呼ばれるものにありがちな「アイディア先行」で終わってしまうということはない。どんなことをやっても基本線はぶれないのがU2のいいところだと思う。自分たちの良さをスポイルしてまで新しいことをやろうとは思わないのだ。ストーンズもそうだ.。どれだけミックが新しもの好きでも、自分たちが「ロックバンド」であることは忘れなかった。そういう意味では彼らは間違いなくロックの王道を突き進んでいるバンドだと思う。

 プロデュースの隙の無さも含めて、全方位的なロックアルバムだと言えるだろう。ただ、意外と想定範囲内の変化であったようなところはある。個人的にはU2はかっこいいと思いつつも、少々重たさを感じるところがあって、そこが前々作「All That You Can't Leave Behind」から大きく変わってよく聴くようになったんだけど、今作は完璧故に重さが復活した感じ。エッジのギターは冴えに冴えているし大好きなんだけど、ついつい息を止めて聴いてしまうんです。何が悪いというわけではないんだけど。

 おすすめ度★★★☆(06/03/09)



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