U2,通算12作目となるニューアルバム。前作が5年前ということで、並のバンドであれば久しぶりという感じもするのだが、U2くらいになるとあまりそういう感じがしない。むしろ5年くらい開いている方が、より完成度の高いものを作ってくれたんじゃないかという期待を抱かせる。しかも、すでにメディアでは「新展開」「衝撃作」といって言葉が並んでいる。実際、リードトラックであるGet On Your
Boots がこれまでのイメージを覆すような曲であったので、アルバム自体もかなりの変化が見られるのではないかと思っていた。
ダニエル・ラノワとブライアン・イーノというかつての黄金コンビ、初期のU2サウンドを形成した立役者スティーヴ・リリーホワイト、そしてBEPのウィル・アイ・アムという、すごそうでよくわからないプロデューサー陣。いったいこの4人のプロデュースがどのような融合を見せていくのか、そこが楽しみであったのだが、できあがったものは実にU2らしいというか、王道中の王道とも言うべき小細工なしの骨太ロックであった。
アルバム自体はクラシカルなタイプの曲とニュータイプが混在した構成になっている。ただ、トータル的な印象では僕はクラシカルなタイプの曲の方が耳に残った。ベースがドライブし、ドラムがバカスカ鳴り響くGet On Your
Boots やブルージーなグルーヴがThe Charlatansを思わせるStand Up Comedyなどよりも、80年代に回帰したようなNo
Line On The
HorizonやMagnifisentのほうが、「この時代にこれが聴けるのか」という新鮮さがあった。当然のことながらどの曲もよく練られているというか、「衝撃作」と呼ばれるものにありがちな「アイディア先行」で終わってしまうということはない。どんなことをやっても基本線はぶれないのがU2のいいところだと思う。自分たちの良さをスポイルしてまで新しいことをやろうとは思わないのだ。ストーンズもそうだ.。どれだけミックが新しもの好きでも、自分たちが「ロックバンド」であることは忘れなかった。そういう意味では彼らは間違いなくロックの王道を突き進んでいるバンドだと思う。
プロデュースの隙の無さも含めて、全方位的なロックアルバムだと言えるだろう。ただ、意外と想定範囲内の変化であったようなところはある。個人的にはU2はかっこいいと思いつつも、少々重たさを感じるところがあって、そこが前々作「All
That You Can't Leave
Behind」から大きく変わってよく聴くようになったんだけど、今作は完璧故に重さが復活した感じ。エッジのギターは冴えに冴えているし大好きなんだけど、ついつい息を止めて聴いてしまうんです。何が悪いというわけではないんだけど。
おすすめ度★★★☆(06/03/09)