Review V - 

Vampire Weekend/Van She/The Veils/Velvet Crush/The Velvet Teen/The Verve/The View/The Vines/The Virgins/Volovan
Vampire Weekend
Vampire Weekend
マンハッタンにあるコロンビア大学で結成されたVampire Weekendの1stアルバム。
愛すべきポップな楽曲が粒ぞろい。そして、そのどれもが60年代のポップスのようなエバーグリーンな魅力を醸し出していることにまず驚かされる。
そして、このバンドが注目される所以は、そのサウンドスタイルであろう。アフロ・ビートを特徴的に取り入れ、メロディーだけでなく、そのリズムさえも強烈なフックに仕上げている。また、全編に渡ってハンドメイドな手触りを残すことによって、バンドの生み出す音楽の魅力がよりダイレクトに伝わってくるのはClap Your Hands Say Yeah!の1stを想起させる。
こういうスマートなサウンド作りは、得てしてどこかで、スノッブな面を漂わせがちなのだが、彼らの場合はそういうところがあまり感じられない。嫌みがないというか、単純に自分たちの好きなことを思いっきりやったという、純粋な想いが音から伝わってくる。
ただ、センスの良さで作り上げてしまった感もあるのは確か。このセンスが、今後どのように磨かれていくのかが楽しみではある。

おすすめ度★★★★(08/03/16)


Van She
V

Surf’s Up Van Sheはオーストラリアのバンド。本国ではVan She Techという名でDJもしている。タワレコでは「ニュー・オーダーを思わせる」と書いてあったので、思わず購入した。で、一聴した感想はいわゆるはやりのシンセロックではあるのだが、Killersからグラマラスなテイストを抜き、ニュー・ウェーヴテイストを少し加えた感じ。ジザメリを思わせるような甘美なギターサウンドも所々に見られ、ギターロックファンにも大いにアピールできる作品だと思う。
 80年代を思わせるメロディーのわかりやすさと、仄暗いところからグイグイと広がりを見せるスペイシーなサウンドがこのバンドの魅力。また、DJをしているというだけあって、ブレイクの入れ方などは実に上手いし、自分たちの音楽的バックボーンを違和感なく昇華させているセンスは見事だ

 アルバムの構成からいくと、KellyやStrangersのようなポップ調のものが多い中、個人的にはIt Could Be The Same のような後半ギターが暴れる激情型のナンバーがかっこいいと思った。もっとこういうテイストのナンバーが多かったら好みではあるが、明らかにトレンドではない。今の時代において、すごく個性的かというとそうは言えないのだが、全体的な楽曲のクオリティーの高さは間違いのないところ。


 そして、聴き終えた後の清涼感は癖になるかもしれない。サイダーみたいなロックですね。

 おすすめ度★★★☆(24/02/09)







The Veils
The Runaway Found
 ロンドン出身のバンド。近頃のラフ・トレードは充実しているのでかなり期待して聴いてみたが、期待通りの良さである。冒頭の曲「The Wild Son」のイントロを聴けば分かるとおり、ドラマチックなメロディーと若干グラマラスなヴォーカルが特徴的である。曲調的にはバラエティーに富んでいるが、その1曲1曲が即効性を持っていて、よく比較されているスウェードを凌駕するほどの叙情性を兼ね備えている。ストリングスの使い方を含め、サウンドプロダクションがそれだけ自分たちの持つ叙情的な部分を表現することに成功していると言うことなのだろう。バーナード・バトラーが何曲かプロデュースしているとのことで、しなやかにからみつくギターサウンドも一つの聴き所であると思う。スウェードファンだけでなく、UKロック好きなら気に入る人がたくさんいると思う。
注文をつけるとしたら、アルバムの後半が少々だれるところ。スローなナンバーが主体となるが、まだ、聴き手を自分たちの世界に引きずり込むだけの力はない。でも、曲のちりばめ方によってはこの点も解消されたのではないかと思う。しかし、あえて後半に暗めの曲を続けるところが、バンドとしての自己主張なのかもしれない。
 おすすめ度★★★☆(04/4/18)


Velvet Crush
Timeless Melody
 ベスト盤。これ、結構売れているそうです。僕は彼らについてはファーストとセカンドしか聴いたことがありません。セカンドの「TEENAGE SYMPHONIES TO GOD」は初めて聴いたアルバムで、タイトルがビーチボーイズの「スマイル」のキャッチコピー(神に捧げる十代の交響曲)と同じというだけで買ったのですが、その年の愛聴盤となりました。ティーンエイジ・ファンクラブと並ぶ爽快ギターバンドとして僕の中で君臨していたのですが、サードがイマイチで試聴しただけで買うのはやめました。なんとなくその頃を懐かしく想い買ったのですが、やっぱり1stと2ndの曲がずば抜けて良いです。つまり1曲目から14曲目までで満足。メロディの甘酸っぱさがとても心地いい一枚。
 おすすめ度★★★☆(01/12/2)


The Velvet Teen
Out Of The Fierce Parade
 最近ネットでよく目にしていたバンドだったので、購入。アメリカのバンドであるが、最初は絶対イギリスのバンドなのだと思った。つまりは、そういう音作りをしているバンドである。「The Prize Fighter」のようにポップなものもあれば、「Red Like Roses」のように「OKコンピューター」時のレディオヘッドのような曲もある。非常に幅広いソングライティングが印象的だ。ただ、ここまで幅が広いと普通なら散漫な印象を抱きがちであるが、この作品には不思議な統一感がある。非常に説明が難しいが、ギターロックのあらゆる可能性を追求していこうとする姿勢がはっきりと現れている部分で、まとまりを感じる、といえばいいか。本人たちがそんな風に考えているかどうかはわからないが、僕はそう感じる。そして、曲が抜群にいいのも魅力的だ。これだけ多彩に、しかも素晴らしい曲を書けるのに、あまりメジャーでないのはなぜだろう。VOLOVANもそうであるが。現在のエモ・ブームにうんざりしているだけに、もう少し認知されてほしいバンドである。
 おすすめ度★★★★☆(02/3/7)

Elysium
 最初はミニアルバムと紹介されていたが、今作は収録時間は短いもののすべての曲がある縦糸を通して見事につながり合ったコンセプトアルバムとなった。前作と比べるとギターロック的な部分は鳴りを潜め、ピアノやオーケストレーションがフィーチャーされた静的なアルバムとなっている。とはいえ、その静的なサウンドに実は色々な感情が込められていて、本来はもっと簡単に表現できるものをあえて、これまでとは違った形でなされているような気がします。彼ら本来の美しいメロディーも健在ですが、一聴してすぐ分かるという感じではなく聞き込むたびにじわじわと伝わってくる感じです。しかし、今回あえてそういうサウンドプロダクションを選んだ分、彼らの描く世界というのは大きな広がりを見せた気がします。そして、このアルバムを通して聴いただけで、一つの映画を観たような気分になります。正直なところ次の作品では、「Out Of 〜」のようなかっこいいギターサウンドや、宗教色の消えた俗っぽさのある曲も聴きたいのが本音ですが、このアルバムで今の彼らのやりたいものは充分表現し切れていると思います。
 おすすめ度★★★★(04/7/1)



The Verve
Forth

 The Verve11年ぶりの復活作。先日のサマソニでは圧巻のステージを披露した彼ら。単なる話題作りの再結成でないことを見事に証明した。

新作からサマソニで披露されたのは、1曲目Sit And Wonder、2曲目Love Is Noise。そのSit And Wonderは新たな始まりらしい威勢のいい言葉ではなく「座って瞑想するんだ」という、いかにも彼ららしい再スタートを飾るナンバー。その重々しく呪術的なグルーヴは、まさにVerve印の逸品。そして、リードトラックのLove Is Noiseはヴォーカルのサンプリングとポップなメロディーを基軸にした、変化球的アンセム。初めて聴いたときは、どこかしっくりこなかったがサマソニで最後に演奏されたものは、その前の「Better Sweet Symphony」と遜色ないほどの輝きを放っていた。つまりは、単体よりも流れの中で生きるタイプの曲なのかなと思う。

 で、このLove is Noiseをのぞけば、壮大なスケールで流麗なメロディーを聞かせるタイプの曲と、サイケデリックにとぐろを巻いていくようなタイプの曲が混在し、自在に舵を取りながらアルバムは進んでいく。その姿が、まるで11年間の不在の間の彼らのようにも見える。目まぐるしく変化する音楽シーンをよそに、彼らはその奥底でこのような鮮やかなグルーヴを描いていたのかなと思うと、それだけで感動的だったりする。

 尺の長い曲は多いが、決して冗長な感じは受けない。むしろ、サイケなグルーヴに身を任せることの気持ちよさを久しぶりに思い出させてくれたような懐かしさを感じる。聴き込んでいくと、確かに甘さを感じるところもある。それでも、リチャードのソロよりはずっと好き。ボーナストラックの2曲は若干ソロよりな感じがするが、Verveという屋号を再び背負うだけで、こんなにも力強く響くのかという驚きがある。

  この先、「Urban Hyms」のような怪物を再び産み落とすことができるのか、それはわからないし期待すべき事ではないだろう。

 11年かかって自分にもわかったことがある。Verveの代わりを務めることができるのは、Verveしかいないという事。その事実はすごく大きい。

 おすすめ度★★★★☆(09/22/08)

Love Is Noise


The View
Which Bitch?

Surf’s UpThe View の2nd。オーウェン・モリスのプロデュースを受けた今作は、野心というか彼らの音楽性の幅広さを見せつけるような作品である。

 1stは若々しさあふれるロックンロールと瑞々しくキャッチーなメロディーでグイグイと押していく最高のアルバムだった。ワイルドでありながら、どこか繊細で切ない。そういう二律背反の魅力が絶妙なバランスで同居している、素晴らしいアルバムだった。

 新作でも、青春の初期衝動全開のロックンロールは健在。というか切れ味は更に増した印象を受ける。シングルの5Rebbeccasはサウンドのキャッチーさはもちろんのこと、歌詞が素晴らしい。誰もが一度は感じる大切なものを失う感覚を感傷的に描くのではなく、あえて向こう側へと突き進もうとすることで気持ちを純化させていく若者のリアルな姿が描かれている。

 ただ、アルバム全体を見渡すと、こういうロックンロールナンバーに焦点を置いたアルバムではないことがわかる。冒頭述べたように、新たなタイプの曲が実に個性的で強烈な印象を与えるのだ。

 例えばUnexpected、Distant Doubloonなどストリングスの入った曲があるが、単に味付けとして加えた程度ではなく、主導的に機能している。また、この2曲もそれぞれタイプが違って、前者はドラマチックに展開する叙情的なナンバーで、後者はランディー・ニューマンのようなノスタルジックなテイストを醸し出している。

 個人的に一番度肝を抜かれたのがOne Off Pretender。ここではなんとラップに挑戦。サビこそ王道のロックンロールであるが、この曲だけ聴いてThe Viewだと判別するのは不可能だろう。

 それ以外にも様々な挑戦が見られ、バンド自体が目覚ましい「成長」を遂げていることはわかる。彼らの音楽性が非常に幅広いことはわかった。ただ、これらの冒険が若干浮き上がって見えてしまうことも事実である。一つ一つのクオリティーは高いが、ベクトルの方向に少々乱れがあるような印象を受けてしまうのだ。

 方向がしっかり定まっていたら、きっととんでもないアルバムになっていただろう。でも、やはり2作目にしてこれだけのものを作ったことはすごいと思う。

 おすすめ度★★★★(15/02/09)

5 Rebbeccas
Shock Horror
Unexpected
Off The Pretender


The Vines
Winning Days
 ロックンロールの持つうねりと、グランジの激情と、ポップなメロディーセンスを持つ希有のバンドである彼ら。前作に比べるとサウンド面で遥かに進歩している。一言で言えば「すっきり」した感じであるが、前作よりもサイケ感が出されていてバンドの新しい色を出すことにもすごく意欲的に取り組んでいる。
 しかしながら、僕たちがVinesに求めたものはこういうものであったろうか。やけにすっきりしたサウンドに違和感を感じるのは僕だけだろうか。いいなと思う曲も結構あるんだけど、もう一つぐっとこない。例えばMando Diaoが躓きそうになりながらも不器用なロックンロールを奏でる時、上手い下手を超えた、綺麗汚いを超えたカタルシスを感じることがあるが、そういうものがこのアルバムにはない。あのがむしゃらにロックする感じがこのアルバムには感じられないのだ。そこがやはり残念だし、Vinesはそういうものを作れる才能が絶対にあるはずなのでよけいに物足りなく感じてしまう。「Winning Days」とか曲としてはすごく好きなんだけど、僕の求めるVinesではないんだよな。
 おすすめ度★★★(04/4/9)

Melodia
 すっかり久しぶりな感じのするThe Vinesの4枚目。いろいろゴタゴタがあり、活動が順風満帆と行かなかったことが実に悔やまれるバンドだ。かつてのStone Rosesしかり、思わぬところでバンドが停止状態に陥ってしまうことで、良い状態を失ってしまうことはよくあることではあるが、その後、才能の断片にふれるたびに「もったいないな」という気分にさせられる。
 1曲目の「Get Out」の思い切りの良さ、2曲目「Manger」の重々しいビートに、切ないメロディーが乗っかっていく様を聴くと「The Vines完全復活!」と一瞬思う。
 しかし、2ndまであった狂気が宿った激情も、ため息が出るほど美しい叙情性も十分に感じられるかというと、そこまでは達していないように思う。かつての輝きを取り戻そうと気合いは感じられるが、バンドの一体感というかベクトルがまだ定まっていないようなところもある分、音から絶対的な強さが感じられない。
 
ただ、相変わらず素晴らしいメロディーの曲が多いし、曲のまとまり具合や配置のバランスなどは向上しているように思う。だから期待してものとは違うかもしれないが、アルバムのフォルムとしては美しい作品に仕上がっている。なので、個人的にはよく聴くアルバムです。でも、昔からのファンの受けはどうなのだろうと。ここでまたバンドの活動が頓挫しないことを願っています。

おすすめ度★★★☆

He's A Rocker



The Virgins
The Virgins

Surf’s Up The Virginsのデビューアルバム。NY出身の3ピースバンドで、人気ドラマの挿入歌にバンドの曲が利用されたことにより、人気に火がついたとのこと。

 すごく平たく言うと、ipodのCM音楽集とでも言おうか、ポップ&ファンクを基調とした耳なじみの良いアルバムである。80'sテイストが色濃く、当時のニューロマンティック当たりのサウンドを彷彿とさせる。カッティングの軽さ、チープな音色のシンセなどあの頃の黄金律とも言うべき必殺技をいくつも繰り出してくる。

 ポップなファンクナンバーRich Girlsはもういかにもな感じであんまり好きではないのだが、She's Expensive、One Week of Dangerのような荒削りでロックよりなナンバーは実にかっこいい。そして、一番の驚きはとにかく曲のキャッチーさが半端ではないこと。「一度聴いたらしっかり耳に残る」というありがちな文句が実にぴったりとはまる。しなやかなグルーヴを描きながら、キッズの心をわしづかみにする力のある曲をこれだけそろえたのはすごい。

 1stでここまでクールで隙のないポップアルバムを作ったバンドとして、ついフランツ・フェルディナンドを想起してしまうのだが、フランツほどの確信犯的な要素はなく、どちらかいうと無邪気に自分たちのやりたい音を楽しんでいる感じ。むしろ僕はそこに好感を持った。聴き手との微妙な距離感を保つことで、いつまでも刺激的であろうとするフランツに比べると、そういう衒いがない分いささか線が細いようにも思えるが、逆にポップをまとったリアルな部分がより伝わってくるような気がする。歌詞も女の子のことを歌っているようで、その享楽の裏にある閉塞感や失望感を感じさせるところがある。なので、是非とも歌詞にも注目してほしい。

 ただ、ちょっとどうしても許せないことがある。それは日本盤のコピーにある言葉。「NYのお洒落セレブの間で人気爆発!!」・・・あぁ、もう死ぬほどひどいコピーだ(笑)。本当かもしれないが、頼むから勘弁してほしい。これは明らかにセレブ向きの上っ面の良い音楽ではない。実に誤解を招きやすい言葉だ。

 おすすめ度★★★★(09/05/09)






Volovan 
VOLOVAN
 これはいいですよー。以前にタヒチの新作の時に「ギターポップはもう食傷気味だ」と思っていたのですが、これは気に入りました。VOLOVANの詳しい情報はわからないのですが、アンディ・チェイスがプロデュースをしています。アンディ・プロデュースということで、もちろんタヒチ80、FOWばりのギターポップ全開です。何せ曲がいい。「Ella Es Azul」(傑作!)を始め、とにかく名曲揃い。2002年度発売と言うことで、昨年出会っていたら間違いなくベスト10入りしていた素晴らしいアルバム。つまらない説明不要。タヒチ80、FOWが好きな人はもちろん「ギターポップ」を愛する人なら必聴!!
 おすすめ度★★★★★(02/3/7)


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