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Wavves/We Are Scientists/Weezer/Wheat/White Lies/The Wonder Stuff
Wavves
Wavves

Surf’s-Up サンディエゴ出身のネイサン・ウィリアムスのプロジェクトであるWAVVES。            
 暴力的にノイジーなサウンドに力の抜けたローファイ・メロディーという構図から、なんとなくNo Ageあたりの名前が浮かんでくるが、彼らよりも幾分「行っちゃってる」感が強い。サーフサウンドをさらに過激なアレンジにしたような曲があったり、初期ベックを思わせるようなフリーキーなローファイポップもあるが、一貫しているのは奥底に流れる「得体の知れ無さ」だ。

 縦横無尽にかき鳴らされるギターノイズと、グルーヴを形成しているのかどうかはっきりしないリズム。音質もモッコモコ。個人的には更に狂ったPIXIESみたいな、そんな姿が浮かぶ。不思議とどこに重点を置いているのかがわからない音であるが、おそらくそこがこのアルバムの肝なのだと思う。

 メロディーを聴かせたいとか、いい演奏をしたいとかそういう意志でならすのではなく、とにかく「振り切れてしまう」こと。ロックの「その先」を見せてくれるバンドはそうはいない。手加減ゼロ、抑揚なしのガチンコサウンドは、これはこれでなかなかクセになる。

ギターロックの飽和状態がますます進んでいく中で、一つの方向性を示しているような作品。

 おすすめ度★★★★(21/05/09)


We Are Scientists
WITH LOVE AND SQUALOR
CYHSYに続いてNYのバンド。ジャケットのセンスは好きですね。でも、メンバーの中にいる眼鏡をかけた彼は、僕にはどうしてもアル・ヤンコビックにしか見えないんですが。誰も知らないか・・・
 一聴した感じではニューウェーヴの流れをくんだポスト・パンクっぽい音である。いわゆる今あちこちで聞かれる音であるわけであるが、彼らの音は何かが違う。切れ味の鋭いギターとメロディーが特徴的なのだけど、切れ味が半端ではない。そして、独特のグルーヴ感を持っている。で、僕はMonochrome Setを思い出した。キャッチーなメロディーと勢いのあるギターサウンド、で微妙にニューウェーヴの香りを出している感じが似ているなと感じた。で、僕は意外とこういう音って無いんじゃないかと思う。演奏自体よりも楽曲の癖だと思うのだが、やぶれかぶれなポップ感がどの曲にもあって、アルバムを聴き通すに当たって疾走感を醸し出している。つまりは1枚聞き通すのが気持ちいい。実はこの手のサウンドのアルバムには意外と気持ちよく聴き通せるものが少ないように思う。飽きてしまうんです。でも、これはいけますよ。
 

おすすめ度★★
★★(06/2/24)

Weezer
Maladroit
 前作「ザ・グリーンアルバム」で劇的な復活を遂げたWeezerの1年ぶりの新作。一昨年サマソニでの猛烈な歓迎ぶりは今でも忘れられない。「ウィーザーってこんなにファンがいるの?」というくらいの大歓声が巻き起こり、彼らもそれに応えるかのように「MY NAME IS JONUS」から1stの頭三曲を立て続けにやってのけた。ただただうれしかった僕であった。それからしばらくたって「ザ・グリーン・アルバム」が出た。曲の出来は相変わらずすばらしく、流れ的にもう少し抑揚をつければ完璧だな、さすがはウィーザーだなと思わせてくれた。
 今作はどうか。「脱・泣き虫宣言」と謳われているだけにサウンド的にはよりハードな色合いが強くなった。ギターの音色も時にはヘヴイ・メタルっぽいものもある。全体的に勢いに満ちたアルバムである。ただ、曲の完成度からいえば、前作よりは落ちたような気がする。単純に好みでないだけかもしれないが、少し大味な感じがするのだ。「今作が一番好き」という人もきっとほとんどいないと思う。ただ、初めて聞く人にとっては、またエモコアが好きな人には広く受け入れられそうな気がする。そういう人にはおすすめ。
 おすすめ度★★★(02/06/22)

Make Believe
 「Beverly Hills」「Perfect Situation」この頭2曲を聴いただけで本当に胸が熱くなった。僕はWeezerに関してはどちらかというと「ピンカートン」派で、このサウンドの復活はもう涙ものなのだ。「ピンカートン」後の長い沈黙の後復活した「グリーン・アルバム」では完全無欠のポップネスを見せつけ健在ぶりをアピールしたが、妄想が暴れ出すような彼ら独特のエモーショナルな表現が抜け落ちているような感もあった。次の「マラドロワ」はサウンドとメロディーのバランスを欠いた感があり、合格点をあげられるようには感じなかった。そこからバンドはまた長い冬眠に入った。そして、このアルバムは「目覚め」となったわけだが、この長い冬眠が決して無駄でなかったことを思わせるくらい,,「さすがWeezer」と思わせるくらい、ひねりのきいたポップソングが並んでいる。
 メンバーの写真で構成されたジャケットは今作以前にも2枚ある。その写真を見るたびに思うのだが、フロントマンであるリヴァースは小柄でルックス的にも臆病で神経質そうな、とてもかっこいいとは言い難い風貌をしている。これがトラウマになっているかどうかは分からないが、僕はこのリヴァースのパーソナリティーこそが、このバンドの肝であると思っている。今作はサウンド的にはまさに集大成的な感じを受ける。前述のように「ピンカートン」のヘヴィーさ、そしてファーストのような完成度の高いポップどちらも楽しめる。そして、メロディーもこれまでと遜色ないほどのクオリティーを保っている。しかしながら、このアルバムの1曲1曲に光を与えているのは間違いなくリヴァース・クオモという人間のエモーションであると思う。34歳になりながら、依然20代のように少しの傷で壊れてしまいそうな繊細さを持った人間が、ギターを抱えてのたうつ感情を爆発させる。これはこれで立派なロックスターだと思う。僕はいわゆる「負け犬の遠吠え」というものが嫌いだ。「がんばらなくていいんだよ」というのもあまり好きではない。負けても良い、がんばらなくてもいいとは思うが、はなから開き直る姿勢が好きではない。リヴァースは必死に闘っている。しかも、とても不器用に。8曲目で「Pardon,Me」と繰り返されるところで僕はいつもそう感じる。完成度が高いのに、どこかいびつに聞こえるのは1曲1曲にリヴァースの人となりが表れているからではないだろうか。
 捨て曲のない良いアルバムだと思う。初めて彼らの音楽を聴くという人には1st,2ndではなくこちらをお薦めしたい。
 
おすすめ度★★★
★(05/6/29)
The Red Album

 Weezer三度目のセルフタイトル。
 今作、weezerにしては珍しく「スルメアルバム」ではないかと思っている。聴けば聴くほど馴染んでくるし、発見はあるし、今こうやって書きながら聴いてるけど、うまくまとまらないかも。
 まず1曲目のTrouble Maker。ビシッと決まったリフで始まるこの曲、タイトな演奏とフックの効いたメロディーは、まさに挨拶代わりといった感じ。
2曲目The Greatest man that Ever Livedはらしからぬタイトルながら、メロディー自体は実に彼ららしくメロウネス。しかし、目まぐるしく曲調が替わりながら最後まで暴走する、新たなWeezerのアンセムとして加えられるべき1曲である。
 そして、3曲目Pork And Beans。誰もが「これぞWeezer」と言うような王道を行くサウンドであるが、歌詞が素晴らしい。「僕はやりたいことをやるんだ/君に対して証明すべきことなんて何もない/ポーク・ビーンズと一緒にキャンディを食べてやる」

 そして、こう締めるのだ。「君がどう思おうとこれっぽっちもかまわない」

 泣ける。本当に泣ける。この3曲だけであとはどうでもいいってくらいに。だが、当然この後がぐだぐだな訳がなく、素晴らしい楽曲が並んでいる。
 おもしろいのは5曲目「Everybody Get Dangerous」。一瞬レッチリかと思ってしまうくらい、しなやかなファンクチューン。まぁ、プロデューサーがリック・ルービンだからね。あと、リヴァース以外のメンバーがヴォーカルを務めるナンバーもなかなかいい味を出している。Thought I Knewはブライアンの楽曲でヴォーカルも彼だが、リヴァースの作品に全く見劣りしないくらいの名曲です。パット作のAutomaticは骨太のロックチューン。どちらも全く違和感ありません。

ボートラの3曲はいずれもカバー。BoAのカバーも思ったほどイタくはありませんでした。この夏、何度となく聴きそう。ただ、ジャケットのリヴァース、ベルトの上がなんか気になってしまう。おなかの乗り具合が。幸せなんだな、きっと。

おすすめ度★★★★☆(06/14/08)

Pork and Beans
 


Wheat
Per Second, Per Second, Per Second... Every Second
 デイヴ・フリードマンプロデュースのギターバンド、というだけで買ってしまった一品。もっとサイケっぽかったり、流麗な感じを期待していたけど、全然違いました。1曲目「I Met A Girl」はシングルだけあって非常にキャッチーで瑞々しいメロディーが光るいい曲。その後も、非常に陽性なアメリカのギターバンドらしい乾いた質感のロックを聴かせてくれる。デイヴ・フリードマンはこういうバンドもプロデュースするのですね。彼が手がけた作品でこういう勢いのある感じのものは初めてです。ただ、作品を通してバンドの個性はあまり感じられませんでした。ソングライティングの力は結構あると思うので、デイヴの仕事はそれを一皮むいてやることなのだと思うのだけど。ESPが「これぞ自分たちの世界」というものを強烈に提示しているのに比べると、やや物足りなさが残るのです。
おすすめ度★★★(04/1/23)

White Lies
To Lose My Life

Surf’s Up  英国はロンドンの3ピースバンドWhite Lies。デビューアルバムはすでに本国ではチャート1位に輝いたとのこと。注目度の高いデビューアルバムである。

 リヴァーブやコンプがガシガシきいたギターにシンセが絡む、ダークで艶っぽいメロディーに低温のヴォーカルという構造はジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせるだろう。漆黒の闇から奏でられる情念を帯びたロック。ただWhiteLiesの場合、もう少し広がりがある。

 例えば、ジョイ・ディヴィジョンの影響を受けたバンドとしてEditorsが挙げられるが、彼らに比べるとWhite Liesのメロディーは陽的な部分が見られる。その分、歌メロのインパクトが強い。これはバンドにとって大きな武器ではないだろうか。

 そして、ギターのフレーズやシンセのちょっとした音色もツボを突いたものが多い。From The Starsではストリングスを取り入れているが、これがちょっと斬新な感じである。センスの良さというか、アレンジ・プロデュースによるところも大きいと思うが、サウンド全体に艶っぽさが感じられるのだ。

 曲名からもわかるように、その世界観は死を匂わせるものが多い。ただ刹那的なものではなくて、死というものを見据えた上で、自分の存在理由を何とかつかみ取ろうとするような生々しさを感じる。決してスマートではなく不器用に傷つきながらも、しっかり前を見据えているような凛とした姿が浮かぶ。

 個人的には メロディアスでエモーショナルな曲で押していく前半よりも、祈りを捧げるようなNothing To Hide、壮大なラストナンバーThe Price of Loveと流れていく後半が好きである。

とりあえずデビューアルバムとしては十分合格点だと思う。インパクトも十分。非常にまとまりがいい。ただ、彼らが更に進んでいくためには、このまとまりの良さをどこかで破壊しなくてはならないと思うが、どうだろう。

おすすめ度★★★★(11/02/09)

Death

Unfinished Business


The Wonder Stuff
Escape From Rubbish Island
11年ぶりのニューアルバムをリリースしたThe Wonder Stuff。素直に「お帰り」と言いたいし、彼らが姿を消してからその「空席」を埋めるようなバンドは存在していないので、未だに彼らにはとても期待している。The Wonder Stuffを知らない人に少し説明すると、80年代後半から90年代前半に活躍したバンドで、卓越したメロディーと音楽シーンを揶揄するユーモアセンス、そして「Grove Machine」と呼ばれた唯一無二のバンドサウンドが当時際だっていたバンドでした。アルバムも高い評価を受け、オリジナルとしては4枚の作品を発表し、その後来日公演も組まれていたのですが、あっけなく解散。中心人物マイルス・ハントはVent414やMiles Hunt Clubなどで活動していましたが、正直なところ期待された水準にまでは・・・。今回は「The Wonder Stuff」名義ではありますが、かつてとメンバーが違い、一聴した感じではまるで別のバンドのようにも聞こえます。聞き込むにつれて、随所に「Wonder Stuff節」とも言えるような、ポップでシニカルなメロディーが感じられますが、やっぱり昔のようなやんちゃする姿は見られずじまいでした。ガレージ的な要素を持った「escape from rubbish island」や不思議な広がりのあるメロディーの「another comic tragedy」など、最近の音楽シーンを反映しているあたりはさすがだと思いますがそういう曲も全体的には少ないように感じます。やっぱりかつての「Hup」「Never Loved Elvis」のような大傑作を望んでいるわけではないのですが、もう少し「Groove Machine」の所以たる展開の速い曲や嶽狂うフィドルが聴きたかったです。こんな事を言うと熱心なファンの方には嫌われるかもしれませんが、愛するバンド故に出来に対する寂しさは否めません。でもジャケットの風合いとかはかつてのままなんですよねぇ。

 おすすめ度★★★(04/12/6)




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