ZAZEN BOYSの4作目。ベースが吉田一郎になってから初のアルバム。プロデュースはかつてNumber Girl時代にタッグを組んだDave Fridmann。個人的には、今までで最も聴きやすいのではないかと思う。 オープニングのAsobiからして聞き所満載。前作あたりからシンセなど鍵盤を多用するようになったが、このAsobiでのピアノが実にエロティックで、表現の質も1ランクアップしたような印象を受ける。 個人的にベストトラックはhonnoji。独特のギターリフと、地鳴りのようなドラム。斧を振り回しているようなベースライン。全く交わらないように思われる3者が奇跡のバランスでつながっている。鳥肌立ちまくりの1曲だ。 また、今作では割とわかりやすいメロディーが垣間見える事が多い。例えば、Weekendはまるでプリンスのようなポップ・ファンク。シンセが奏でるメロディーは80年代のポップを彷彿とさせる。また、最終曲、SabakuはZAZEN史上最も向井が「歌っている」1曲。これを聴くと、やはり向井のメロディセンスの確かさを痛感させられる。キャッチーとかメロディアスという言葉では片付けられない、胸に響くメロディーだ。 これまでと違うなと感じるところは、金属的なグルーヴを持った曲は減り、音数は少ないながらもしなやかで強いグルーヴを描く曲が多いということ。そして、やけに切ない歌詞が多いような気がする。 ジャパンのインタビューで、近頃はライヴの後一人ホテル部屋で曲作りをすることが多くなったと語っていた向井。一人=寂しいなんていう安直な発想ではなく、ディスコミュニケーションな空間に点在するものをつなごうとして、このロックは鳴っているのではないだろうか。ホテル部屋であれ、ネットカフェであれ、個室ビデオであれ、あらゆる個をつなぐロック。馴れ合うのではなくて、確かな「個」であることが人と人をつなぐのではないだろうか。向井秀徳の紡ぐホテル部屋のメロディーには、そんな人たちに向けられた輝きが宿っている。 おすすめ度★★★★☆ Asobi Weekend