Review Z - 

ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS
 向井秀徳という人はすごくおもしろい人、かわいい人だなと、単純に思う。ステージでのよくわからないMCもしかり、ライジングサンでレポートを一生懸命やっていた様子もしかり。何か非常にキュートな人だなと僕は思っている。個人的にはカラーとモノクロが交差するような独特の情景描写が生きていたNumber Girlの1st,2ndがすごく好きで、3rdは実験性が進みすぎて、ちょっとついて行けない感じだった。このZAZEN BOYSはどちらに近いのかと言えば3rdの実験性を引き継いだ作品のようにも聞こえる。しかし、よく聞くとそうではないことがわかる。このアルバムは向井があれこれ試すために作られたわけではない。向井秀徳が自分の中で鳴っている音をすべて吐き出した「結果」である。このアルバムの中には「向井秀徳」という人間が呼吸し、徘徊し、セックスをしている。そして、言葉や音に向井という人間の「おもしろさ」が詰まっている。ゆえに、このアルバムはとても生々しい。そういったものを見事なロック作品にしてしまうのは、向井の才能と言うよりは、彼の思考がロック的なのだと思う。僕は思考が全然ロック的ではないので、少しうらやましい。サウンド的にはいろいろな要素が含まれていて、ナンバガ時代よりもとっちらかった感じもある。しかし、「WHISKY & UNUBORE」などは「13」時のBlurのようでもあるし、「COLD SUMMER」の切れ味もこれまでにはなかった感じである。詩についてはもう言うまでもない。本当にすばらしい。特に「自問自答」での「のたうち回りよう」はすごく時代的で、聴き手にリアルに迫ってくる。ロックに時代性を見いだそうとするのならこれは無視できない作品であると思う。
おすすめ度★★★★☆(04/2/05)
ZAZEN BOYS U
 「くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動」ZAZEN BOYSの表現したいことはこの言葉に集約されている事は間違いない。このアルバムの中でも繰り返し使われる言葉。しかし、この言葉を強引に読み解こうとしても何の意味も持たないだろう。感じるべきはこれらの言葉が持つ観念的なものだ。「観念論」のように精神的世界だけが本源的な世界とするならば、その外側にある世界というのはかりそめのものに過ぎない。吐き出される言葉と音の「観念」を感じ取る、つまりはそういうことなのだと思う。
 サウンド的に前作よりもポップになった、という声もあるだろう。確かに前作よりもメロディーがクリアな曲が多い。僕が好きだったNumber Girlっぽい曲もあり、速射砲のような早口ラップも健在だけど、アルバムとしてもまとまりは遥かに向上した。
 しかしながら、このバンドのすごいところはやはり「言葉」だろう。「異物感を覚えたハラん中 鉛か鉄か コンクリートかだ」(安眠棒)日本語の発語の快感とでも言おうか。言葉が発せられるときにそこに「快感物質」のようなものが乗っかってくる。意味はさっぱり分からない。でも、聴いていると何か気持ちいい。PIXIESのような凶暴なサウンドの中に、ねじれた日本語が乗っかった感じ。説明するのも難しいのだけど、これだけの個性をコントロールする術をこのバンドは2作目にして身につけたような気がする。次はもっとすごいことになるだろう。Number Girl解散をやっと肯定的にとらえられそうだ。

 おすすめ度★★★★★(04/11/21)

ZAZEN BOYS 4

 ZAZEN BOYSの4作目。ベースが吉田一郎になってから初のアルバム。プロデュースはかつてNumber Girl時代にタッグを組んだDave Fridmann。個人的には、今までで最も聴きやすいのではないかと思う。

 オープニングのAsobiからして聞き所満載。前作あたりからシンセなど鍵盤を多用するようになったが、このAsobiでのピアノが実にエロティックで、表現の質も1ランクアップしたような印象を受ける。

個人的にベストトラックはhonnoji。独特のギターリフと、地鳴りのようなドラム。斧を振り回しているようなベースライン。全く交わらないように思われる3者が奇跡のバランスでつながっている。鳥肌立ちまくりの1曲だ。

また、今作では割とわかりやすいメロディーが垣間見える事が多い。例えば、Weekendはまるでプリンスのようなポップ・ファンク。シンセが奏でるメロディーは80年代のポップを彷彿とさせる。また、最終曲、SabakuはZAZEN史上最も向井が「歌っている」1曲。これを聴くと、やはり向井のメロディセンスの確かさを痛感させられる。キャッチーとかメロディアスという言葉では片付けられない、胸に響くメロディーだ。

これまでと違うなと感じるところは、金属的なグルーヴを持った曲は減り、音数は少ないながらもしなやかで強いグルーヴを描く曲が多いということ。そして、やけに切ない歌詞が多いような気がする。

ジャパンのインタビューで、近頃はライヴの後一人ホテル部屋で曲作りをすることが多くなったと語っていた向井。一人=寂しいなんていう安直な発想ではなく、ディスコミュニケーションな空間に点在するものをつなごうとして、このロックは鳴っているのではないだろうか。ホテル部屋であれ、ネットカフェであれ、個室ビデオであれ、あらゆる個をつなぐロック。馴れ合うのではなくて、確かな「個」であることが人と人をつなぐのではないだろうか。向井秀徳の紡ぐホテル部屋のメロディーには、そんな人たちに向けられた輝きが宿っている。

おすすめ度★★★★☆

Asobi


Weekend




Designed by NEO HIMEISM